つま先まで愛してる


僕に釣り合う女の子って、どんな子だろう。西洋人形のような、可愛い子?ハリウッド女優のような、艶のある女性?おしとやかな大和撫子?どれもいまいちしっくり来ない。あのね、実は僕の好きな子は、

「相変わらずお前、オトコ女だな!」

「なにをー!」

今も南雲と二人で合宿所にあるマ○オカート(南雲が持って来た据え置き型だ)をしている。深緒がクッパで南雲がピーチ。ピーチの方が使い易いんだと彼は言うが、クッパの深緒と並ぶとある意味可愛く見える。
今も深緒の圧勝でゲームは終わった。南雲は負けてばかり。僕はそんな二人のやりとりを微笑ましく(少しばかり嫉妬しながら)見ていた。僕もあんな風に遊びたいけど、そんなキャラでもないからね。南雲は負けて悔しいのかゲームのリモコンを置いて床を転がっていた。

「ちくしょー、こんなオトコ女に…」
「はいはい。負けたからってそんな事言わないの!晴矢は子供ねぇ。それに、私のどこがオトコ女よ」

「ゲームん時胡座かくわ、下ネタ好きだわ、何やらせてもガサツじゃねーか!」

「やーねぇ、そんなの偏見じゃない。誰だって胡座かいたりするし、女子だって下ネタ大好きなのよ?」

「口調だけは立派にオネエ言葉だけどよ。顔だって俺より男らしいぜ?深緒くん!」

「晴矢が女顔なだけでしょ」

深緒が男らしい顔って言うより、実際南雲が少し女顔で、彼女が凛とした顔をしているだけだと僕は思う。見方によれば女性らしくて、たまに可愛くて、ああこれは贔屓目かな。けどきっとそうだ。
南雲はむきー!と天井を仰ぐ。と、ちょうど南雲の真後ろの延長線上に居た僕と目が合った。にやり、南雲が笑う。

「じゃあアフロディと並んでみろよ、良いカップルになると思うぜ?」

晴矢が僕のところまで来て、ぐいと僕の手を引っ張った。深緒はソファに腰掛けて自分の右側を叩く。「来いよ…」なんて言う深緒。君、ノリノリじゃないか!なんて突っ込むタイミングも無い。ああ、思ってもない幸運!僕はいそいそと深緒の隣に腰掛けた。そしてあわよくば…と彼女に体を傾けた。
見ていた晴矢はなぜか目をまるくして言葉も無く僕達を見ている。

「意外と…絵になってるな…」

俺は冗談のつもりだったんだが、と晴矢が首を傾げる。僕は悪い気はしない。たとえ僕が女役であろうと。

「アフロディと並んだら誰でも男前だって!アフロディ、そこらの女子よりずっと綺麗で可愛いじゃない」

自嘲気味に言う彼女に僕は思わず口を開く。

「深緒は綺麗だよ。深緒が僕をどう言おうと僕は自分より君のがずっと綺麗だと思ってるし可愛いし、何より君は女性だ。南雲が君をどう言おうとそれは君が接しやすくておおらかで、男子にもかわりなく接することが出来るからだろう?がさつなのは、不器用でも自分で出来る事は自分でしようとするから。それに好きになった女の子が自分より男前だって思う男なんか居ないよ。深緒はすこし謙遜し過ぎ。もっと自信を持って、この僕が認めた"女の子"なんだから」

早口に、思った事をつらつらと述べた。途中から自分が何を言っているのか自分でも理解せずただ噛まないように言い放った。
言い終わった時ようやく自分の言った言葉を彼女も僕も理解して挙げ句南雲も顔を真っ赤にさせるのだった。



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