ラヴゲイザー



僕が昔自分をカミサマと謳っていたのが嘘みたいに、今は君が神様なんじゃないかと思っているよ。
純白のドレスを装う君は僕の拙い想像よりずっとずっと綺麗で美しくて幸せだった。頭のてっぺんからふわりと彼女を包むうすいシルクのヴェールはまるで翼のよう。淡く色着いた頬と唇が映えて愛らしい。彼女の好きな色の花ばかり集めたブーケも、僕の目には霞んでしまうほどだ。

「照美くん」

柔らかい声に僕の臆病な胸はどきどき高鳴る。君のせいで限られた数しかない心拍数がどんどん減っていくよ。こればっかりは許してね。
式がまだ始まっていないうちに、僕達は準備を早めに済ませてこっそり教会にやって来た。本番はこの後だから今のうちに練習、という名目で、本当は少し二人きりになりたかっただけ。朝日にきらきらと輝くステンドグラスが僕達に光の道を作ってくれた。

「深緒」

南雲達の前で式をするのに実のところ少し照れがある。キスとか、誓いの言葉とか、深緒を愛しているのが本心だからこそ、余計に。思えば今まで僕が本当の心を見せたのは深緒以外は居なかった。居てせいぜい、円堂君。だから今日は初めて彼等に本当の心を見せる。
誰と居ても何をしていても深緒の事を考えて、彼女にどうやってこの愛を伝えるか悩んだ日々があった。本心を見せるのが億劫になっていた僕を動かしたのは紛れも無く君とその愛。一方通行の僕の愛が君に届いてようやく君からの愛が見えた時、窮屈な僕の中の世界が君でいっぱいになるのが嬉しかった。君が僕の愛であり、神様だよ。口に出しては言わないけれど、きっとこれからもそう、君にとっての僕もそうでありたい。

僕が謳っていた神様は君で、君の謳うそれは僕が形にして、複雑で繊細で幸せな、人間が持ち得る感情で一番美しいもの、"愛"になるんだ。

「ねぇ、君をもっと幸せにさせて?」

彼女のメイクが崩れないようにそっとキスをして僕の神様にお願いした。

「うん、お願いします」

僕の神様は少し照れてはにかんで、頷いた。僕も君の神様として、叶えると誓うよ。



101026


song by 初音ミク/DECO*27