・サイケと猫を飼おう


「名前!名前ー!」


小さな白い猫を抱えてサイケがぱたぱたと走ってくる。
サイケの頼みで飼い始めた白猫はまだ小さく、腕の中でもぞもぞと動くだけだった。
何かあったのかとサイケと猫の頭を一緒に撫でてやると、サイケが泣きそうな顔で見てくる。


「ど、どどどうしよう、さっきね、この子がケホケホって、」

「咳してたの?」

「しかも毛玉吐いてた…!」


ああ、と納得する。
サイケの手から子猫をひょいと奪えば私の手の中でみゃあ、と鳴いた。
サイケは落ち着きなく私の周りを右往左往しては「病気?病院行く?」と心配そうな声を上げている。
もう一度、下から伸ばした手でわしゃりわしゃりと頭を撫でるとサイケは目を閉じてされるがままにしていた。


「大丈夫だよ。毛づくろいの時に飲み込んだ毛が溜まって、それを吐き出してるだけだから」

「病気じゃない?」

「うん」


よかったあ、と私から渡された猫を抱きしめて頬ずりするサイケ。
本当に小さい時から世話をしているからか、猫は嫌がることもなくサイケの頬を舐めていた。
可愛いものが一緒になると、見ていてとても癒される。
嬉しそうにするサイケに口を開く。


「そうだ、サイケ。朝のミルクは?」

「…あっ。まっまだ!」


急に慌てたように私に猫を預け、台所へ駆けていく。
最初は上手くできなかったけれど、ここ最近はサイケの方が上手なくらいだ。
サイケは最初の約束通り、一生懸命面倒を見て、その上すごく楽しそうにしている。
始め、勝手なイメージで犬を欲しがると思っていた。
今では良かったと思う。
私もこの子が大好きだし、サイケもこの子が大好きだ。
このまま愛情を受けてすくすく育ってほしい。


「あちちっ」

「大丈夫ー?」

「だいじょーぶ!」


台所から聞こえてきた声に呼応するように猫がにゃあ、と鳴いた。
私の腕をすり抜けて、小さい身体が走り去っていく。
待ちきれなかったのか、それとも恋しくなったのか。
追いかけてみると、脚に飛びつかれてサイケが焦っていた。
思わず笑ってしまう。
そんな私に向かって、困ったようにサイケが言う。


「手伝ってよ!」


真似をするように、猫が続いてにゃーと鳴いた。


20110222
にゃん
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