「なまえ先輩、いますか?」
「あー兵助か?はいっていいぞー」


コンコンと軽くノックをした後声をかけると予想道理中から了承の声がし、それに甘えて中に入る。


「失礼しま、す…っ!?」
「…どうした奇妙な声上げて?」

どうしたじゃありません!とは声にでなかった。だだ今目の前にいる先輩の姿に驚きで声を無くし見入ってしまう。なんですか、その格好!いや普通であれば別に問題は薄い、それもそうだ。今の自分はそうなる事を分かっていてきたのだから。3日前程に学園長の遣いで外に出ていて今日の今頃帰ってくる予定だった。これは先輩から直接聞いた話だったから間違えはなくて、だからワザと教えられた時間道理に先輩の長屋まで足を運んだのだ。そうワザときっと汚れた忍び装束を脱いで着替えている頃だろうと見計らって。

「失礼しました、!」

とりあえず、そこでジッとしているのも失礼、いや自分の状況にも悪いので入ってきた襖に向き直った。先輩は変なところで鈍感だからそれには気付かなくて、だからか。今の状況にも何だと不思議そうに眉を寄せる。最初からこんな状況になると踏んで来たのにも関わらずなんでこんなにも驚かなきゃいけないのか、それとも今回はしてやられたのか。それにしては先輩の反応は薄すぎるのでそうではないだろう。なんでそっち向くんだよ?と本当に分からないと先輩は俺の名前をよぶ。

「へーすけ?こっちを向いておくれよ」

できるか!と内心叫びつつ一つ一つ声にしていくが、はたして声は裏返ってないだろうか?変に間が入ってしまったせいでこれではなんだか変態みたいじゃないかと思う。顔もきっと赤いにちがいない。まぁ着替えのタイミングを見計らって来た以上変態ではないとは弁解しにくいかもしれないが、いや違う、俺はもし先輩が怪我をしていたら着替えも大変だと思っていたわけでそんな、けしてやましい事を考えてきたわけじゃない。うん

「とりあえず、何かっ、羽織っていただけません、か?」

忍びたるものいかなる時も冷静であれと言われるが。この状況を目の前にして冷静でいるなんてきっと少数だろう。特に先輩とは付き合いが長いという四年の平が見たら、一瞬にして叫んでいたんじゃないだろうか。何が言いたいかと言うとこんな状況でそれが言えた自分は十分凄いと思いたいわけだ。

「ん?あぁこれか、すまない見苦しい物を見せたな。」
「そんなことありません!ただ、驚いただけです、」

これが見た目どうり女だったのなら悲鳴の一つでも聞けたのだろうが、先輩は女でもなければ僅かに声のトーンが落ちただけだった。でもそんな、見苦しいだなんて勘違いしないでください。いや確かに驚きはしてしまったけれども。確かに本来有るはずのない姿を前にすればそうにもなるかと。とりあえず誤解を解こうと振り向けば先輩は言われた通りに既に布かれていた布団から薄い布を羽織っていた。自分から言っといてなんだが、すみませんそっちの方が逆効果でした!

「…ふぅ、すまないがとっていいか?どうも巻いていると息苦しくてな、」

そういうと、胸元のサラシを指して聞いてくる。そう言えばさっきら顔が薄いピンク色なのはそのせいなのか。確かに結構キツく巻かれているようなそれは付けているのは苦しそうだ。悪いなと一言誤ってから胸に巻いてある物を取ろうとする先輩はかなり色っぽい姿だ。と頭の隅で変なことを思っているとん、と苦しそうな声がしてそちらを見れば顔を歪めていた。

「どうしました?」
「いや、なんかキツいっ」

上手く解けないと苦しそうにする。見ると、後ろの方で変に捻れていてそれが邪魔しているようで先輩からだと位置的に見えないのだろう。どうしたものかと悩んでいる表情を見るか否か、俺の手が自然と動いてそれを外していた。シュルリと音を立て緩くなった布に手を当てありがとうと言われその顔を見ると先ほどの苦しかった表情とは違う形っで赤く染まっていた。そこで気付く。俺は何をやってるんだ!気付いたら手が勝手に動いていたとは言え、許可もとらずに今の先輩に密着してしまった。また自分の顔が赤くなる感じがして思わず手で隠し下を向いた。そんな事したら逆に不自然じゃないだろうか。と上からクツクツといつものように笑う先輩の声がして目線のみ上げると頭に重みを感じる撫でられたらしい。

「そんなに恥じること無いだろ今更だ。」

あぁ。やはり先輩気付いてたんですか。
たしかに今更と言われればそうかもしれない。先輩の身体を見る機会は両手で足りないくらいあったし、何よりそう言う行為だって何度もしたことがある。今更身体を見たところで驚きはしないと言いたいところなのだが、何せ今回はいつもと違う、

「いつからですか、」
「あぁ、これか?…たしか一月程前だったか」

確かに思えばその時くらいから先輩の行動に多少疑問があったかもしれない。それに最後に身体を合わせたのもその頃だったか。

「もしかしてあの時断ったのて、」
「そうなるな」


一月前直接否定されたわけでは無いが、そう言う雰囲気になった時にやんわりとはぐらかされてしまった事があった。あの時は危なかったと苦笑いしている先輩にちょっとムッとした感情が出てきてしまう。

「なんでいってくれなかったんですか!」

ここで腹を立てるのは筋違いだと言うことは分かっていたが。怒らずにはいられなかった。言ってくれれば何かしら手伝う事ができたかもしれない。(実際そんな大それた事自信を持って言えた事じゃないが)何より一人で悩んで欲しくなかったと言うのが本音なのだが。ましてやそんな身体で遣いに出て何か間違いでもあったらと考えると頭から血の気が引くのが分かった。先輩の忍びとしての強さは誰より分かっているつもりで。この学園の生徒の中で一番実戦経験があり現に先日行われた五・六年生の実技の授業でも今までにない成績を出したと聞いている。それも踏まえ学園の外の下っ端より先輩が劣るとは思わないが、もしもという事があったら。学園長先生も気付いていないはずはないだろうに。

「兵助、顔をあげてくれ」
「……っ、」
「言わなかったのは悪かったと思っている。けれど心配させたくなかったんだ。言えばお前は危険を承知でオレについて来るだろう、それで可愛い後輩に怪我をされてはオレは気が狂ってしまう。だから言わなかった。」

分かってくれるな?と未だ顔を上げない俺を抱き寄せ再度頭を撫でてくれる。分かっています。けれど少しは心配させてください。
抱きしめられ何時もと違い柔らかい胸が身体に当たると少し鼓動が速くなる気がした。何時だって先輩はそうだ。俺に心配をさせてくれなくてずいるい。少しは自覚をした方がいいです。確かに忍びでは強いかも知れないですが、みんながそう言う理由で近付くだけじゃないと言うことを。

「せんぱい、」
「兵す…んぅっ…」

抱きしめてくれている先輩の肩を押すとどうした?と此方を見てくれる。それを利用して顎に手を当て顔を固定させた後に先輩の口に自分の唇を押し当てた。当然いきなりの行為に驚いた様子だったが直ぐに理解してくれたのか目を細め受け入れてくれた。それを合図と言わんばかりに今度は角度を変え何度か口づける。終わった後に顔を離すとコレで終わったと思ったのか気を緩めた先輩をその場に軽く押し倒し同時に行き場を迷っている両手を片手でひとまとめにし頭の上に固定させ身動きがとれないようにおなかの上に馬乗りして先輩を見おろす。今度こそビックリしたのか手足を動かして多少抵抗するけどこんな力じゃ俺はビクともしない。意地悪くちょっと力を入れて腕を押さえれば痛かったのか少し顔を歪めた。

「少しは自覚してください、いくら先輩が強くても、身体は言うことを聞いてくれないときもあります、」
「分かってるつもりなんだが、」
「今の先輩は女の子なんです!男の俺とじゃ力の強さに差が出てしまう。」
「……っ、」

身を持って分かったから、先輩は押し黙ってしまう。それもそうだ、だって今の俺は軽く押し倒した程度で力はあまり加えていない。苛めるつもりは無いが、もう少し自覚してもらはないと困る。今まで気付けなかった自分にも腹が立つけれども。先輩の無自覚さはこうも不安を煽るばかりだ。もしこの状況が学園の中でなく遣いに出た先で起こっていたら。そこでこうして押し倒しているのが俺ではなかったら。考えるだけでどうしたらいのか分からなくなると同時に酷い嫉妬心が生まれる。本当なら友である同級生やら昔馴染みだと言う平と一緒にいるところでさえ気の迷いが生じる程。あぁこんなにも俺は先輩が愛おしいのだと今度は自分が自覚する。


「別にお前になら何をされてもいいさ」
「なっ」
「…してくれるんだろ?続き」

どうしてこうあなたは!こんな状況でも冷静でいられるなんて、さっきのビックリした表情も演技なんですか?そうもはっきり目線を合わせられると、こっちも持ちません。あぁまた心臓が五月蝿く波打ってしまう。やっぱ何処までも一枚上手です。


「勿論です」



グチャグチャにしてやりましょう。



(怖い?)
(…………)
(無言は肯定ととらえますよ。)
(なん、ぁ、やっ、ああ…!)
((可愛いひと))







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