あれから数日。
勘ちゃんが長期任務に出かけてる間、俺は毎朝名字を起こしに行くようになっていた。「無理にとは言わないから余裕がある時だけ声掛けてあげてくないかな?なまえ朝にすっごい弱くてー」とは言っていたものの親友である勘ちゃんの頼みだし、俺にできる事ならと引き受けたものの。



一日目、初めて様子を見に行くと名字は机の上に突っ伏しいて、寝ているんだろうと思っていた俺は起こそうと手を伸ばし、あと数センチ程で肩に触れると言うところで止めの声が入りそれは叶わなかった。まさか名前を呼ばれるとは思わなかった(フルネーム+さん付けだったが)上にてっきり寝ているかと思った俺は表には出さなかったものの正直ちょと驚いていた。朝弱いじゃなかったのか?とちょっとした疑問を浮かべつつ、起きているならこれ以上この部屋にいる理由はなくなってしまった。はっちゃんや雷蔵と自分の周りは寝起きの悪い奴が揃っていたので初日からこうだとなんとなく納得がいかないと思うのは俺の悪いくせだ。「なんかあった?」と背伸びをしながら聞かれ「いや、起きてるならいい」と言う簡単な会話だけなされ、これ以上会話が続くことは無いだろうと判断したのは名字も同じらしい「じゃ、俺はこれで」と言う言葉の後に「ありがとう、」とお礼を言われその日の俺と名字の会話は短くも終了した。放課後も会うことはなく勘ちゃんがいなければ接点が全くないなと改めて実感したのだ。



次の日は俺が起こしに行ったときには、すでに名字は部屋にいなく、顔を洗いに井戸に行くと先に来ていた。気付いたのか今日は名字の方から「おはようー」と声を掛けられる。まさか先に言われるとまたもやビックリするのだった、しかも今回はすこし顔に出ていたようでなぜかその後に「ごめん」と謝られる。いや誤る必要はないと思うんだが、なんだか名字といると調子が狂う気がする。とりあず、このままではお互い気まずいので自分も挨拶を返し「早いな」と言うと「よく眠れなくて、」と帰ってきて、やっぱりその日もその会話だけなされ俺と名字の交流は終了したのだった。



5日後さすがにこうも連続で起きられていてはなんだか別に行く必要はないのではないか、と思いつつ頼まれた事を途中で投げ出すのは嫌だし普通の友達の頼みならまだしも親友である勘ちゃんの頼みである以上やりすぎる位じゃないと、そうだとりあえず、明日からはっちゃんも誘う事にして、本人が自らから来なくてもいいよと言うまでは続けようと再度確認した頃名字の部屋の前についていっていつも通り声をかけてから襖を開けた。



そこには布団はしかれておらず先に起きていれば一言かかれた手紙が置かれる様になっていた机の上も、綺麗に片付いていて部屋は昨日の朝起にきた状態と全く変わっていなかった。まてよ、そう言えば昨日午後の授業は、は組と合同だったがその際名字の姿はあっただろうか?今更だなと思いながら今度は部屋全体を見るために一歩前進する。



すると部屋の隅の方に小さくうずくまって忍装束のまま体育座りをした名字を見つけた。近寄って数回揺するとピクリと肩が動く大丈夫だ。生きてる。良かったと安心し名字と呼んでみる物のなかなか起きる気配がなく少し考えた後勘ちゃんがいつも呼ぶように「なまえ」と小さく呼んでみた次の瞬間


「勘、右、衛門っ!?」


ガバッと起きあがったのと同時に名字の手が俺の忍装束を握りしめる。この時初めてハッキリと、確実に目線が合った気がする。それで俺が勘右衛門じゃないと分かったのか忍装束を掴んでいる手が緩む。


「ごめん、…」


そう言い終わったと同時にパタリと自分の方に倒れ込む名字を受け止めよく確認してみるとなんだか熱っぽい感じだ、息も上手く整っていないようで、コレは保健室に連れて行った方が良さそうだ。しかし困った、名字と俺は体格が同じくらいある。いくら名字の身長が五年で一番低いと言っても俺が運んでいくのはちょっと無理がある。それにこんなんでも名字は体育委員だ見た目はどうあれ上級生ともなれば鍛えられているだろうし、下手したら自分より筋力があるかもしれない。


考えていてもしょうがない、そして起きたと同時に一瞬だけ見せた悲しそうな顔を思い出す、これはいい機会かもしれない。ちょと人の弱みにつけ込むような形ではあるが、まぁ、俺が運んでやることができないのは本当だし、と心で思いながらはっちゃんに事態を知らせるため俺はろ組の長屋まで足を向かわせる事にした。



ちょっとした優しさ



「全く、無理はしないってこの前約束したばかりだよね」

「す、すいませんでした」

「まぁ軽い寝不足みたいなものだから少し休んだら良くなるだろうし大事には至らなかったから今回は多めにみてあげるけど次はないからね。」

「はい、ありがとうございます、」

「それと彼にはちゃんと御礼を言うんだよ。」

「……?」

「あぁ、えーと君と同じ五年の竹谷君。君をここまで運んでくれたんだよ」

「…、!分かりました、じゃあそろそろ」

「でも今日1日ここから出さないからその後ね」

「え、や。早い方が」

「ん?何。なまえくん僕が作った新作の薬試させてくれる程元気が有り余ってるのかな?嬉しいなーじゃあ早速「げほっゴッホバッハ!す、すいません。今物凄く体調が悪いです、今すぐ横にならせていただきます。それではおやすみなさいですいっさくん先輩」



「それは残念。はい、おやすみなさい。」



そんな二人のやり取りを見てしまった俺は保健委員長怖い。と顔が引き釣るのがわかった。それに名字があんなに喋る所は始めてみたぞ。いや、これが普通なのか?それでも、保健委員長が言ってくれたおかげではっちゃんがここまで名字を運んだと言うことが本人に知らされてしまった。ホントは後々知らせるつもりだったのだが。この人は分かってて言ったのだろうか。それとも親切心なのか。六年の先輩とると分からないと俺はため息をつくしかなった。




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