▼ 太陽と
今日は雨。
海の上と違って、雨でもずぶ濡れになりながら舵を取ったりしなくてもいいが、それでも山の天候が危ないのは知っていた。
危ないから山菜やら果物やらを取りに行くのはやめておこうと、大人しく小屋に閉じこもり僅かな布切れで座布団を繕う。
相変わらず監視は続いており、カラスがこちらをじっと見つめている。
ずぶ濡れになりながら。
濡れねずみって表現がぴったりなレベルだ。
カラスさん。そんなところで濡れるなら、せめて軒下にでも入りなよ。風邪ひくよ?
そう言ってもピクリともしないので、諦めて窓を開けるだけにとどめておく。
ひとまずこの国について整理しようかな。
木ノ葉丸くんのおかげで忍っていう人達がいるのと、ワノ国のような文化があることは分かった。
でも、地理とか歴史とか全然わからないし、海賊なんて言うのもいないのかもしれない。
そもそも、バーソロミュー・くまの力でどうして異世界に来てしまったのかもよくわからない。
偉大なる航路ならば何があってもおかしくはないけど、ちょっと意味がわからなさすぎる気がする。
おかげで帰り方も分からないよ!ってうわ!なんか草むらから飛び出してきた!
え、子供?
金髪に、なんだかヒゲみたいな模様の顔のある少年が泥の上に頭から突っ込んでいった。
よく分からんがとりあえず小屋に入れて、体をふく。
あ、怪しいものじゃありませんからね。いやほんとに。
監視とかついてるしこの土地に関しては完全に浮世離れしちゃってると思うけどね、とは言わないでおく。
ゴシゴシと布で顔と髪とを拭き、とりあえず服を脱がせてブランケット(ちゃんと繕い直した)を被せてあげる。
暖かい飲み物をと思って、お湯を沸かそうと台所に立つと少年がぼそぼそと話しかけてきた。
え?自分が気持ち悪くないのって?
気持ち悪くは無いけどその泥んこ状態はどうかと思うよ。
お風呂入る?五右衛門風呂だから時間かかるけど。
そう言うと、少年はぽかんとした顔をしてふるふると首を横に振る。
いらない?そっか。
ずっと黙りこくる少年に暖かいお茶と桃を出す。
桃、好き?
「…わかんねぇ」
わかんないか。どうも野生らしいんだけど、その割には甘いんだよね。食べなよ。
そう言うと、少年は皮だけを剥いた桃に勢いよくかぶりつく。
ひとくち、ふたくちと食べて、遂には顔を埋めるようにして食べ出す。
あ、あー……汁が。
まあいいか、いっぱいお食べよ。
その光景がサニー号での食事風景に重なって、少し切ないけれど気分は悪くない。
桃を美味しそうに頬張る少年に、わたしは話しかけてみた。
それと引換といったらなんだけどさ、ちょっと知りたいことがあるんだ。
「知りたいこと?俺にわかることならいいけど」
わかるよ。
君はこの里に住んでるんでしょう?
私、この里のことよく分からないんだよね。
来たはいいんだけど、そもそもまわりの地理とか世界情勢とかもよく分からないし。
忍がいることは知ってるけど、ほかは全然。
「何も知らないなんて、箱入り娘ってやつか?」
あー。まあそうだね。どっちかっていうと船乗り娘だけど。
まあ、そういう訳で全然知らないんだ。
ここがどんな所か教えてよ、少年。
「少年じゃねえ!オレは、うずまきナルトだってばよ!!」
ナルトくんって言うの?ふふ、私は名前だよ。
仕立て屋なんだ。
宜しくね。ナルトくん。
太陽みたいな男の子
(その後ナルトくんが教えてくれたことは、火影のことばっかりだった)
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