2Y→4Y | ナノ


▼ 鹿と

4年……4年か。
既に心が折れそう。でも裏を返せばそれだけ色んなことができる……!
ポジティブに考えればラッキーかもしれない。
よし、頑張ろう。

生計を立てる、と言っても私に出来るのは布を縫うことくらいだし、どこかの服屋さんにでも雇ってもらうしかない。
この世界ではお店で働くためになにか必要なことがあるのだろうか。
もう監視とかも気にしないで、とっとと人里に降りて就職したい。
ザ・就活だ!

そう意気込んで外に出ると、近くの草陰からガサガサと音がする。
また監視役の動物の皆さんだろうか。
気にせず山を降りようと歩を進めると、視界の端に2本の突起物がにょきっと生えた。

鹿だ。
鹿がいる。
うちの船医を思い出すなぁ。あの子はトナカイだけど。
随分と大きな鹿だ。ツノが立派だし、オスなのだと思う。あいにく私は動物とは話せないけど、うちの船医も立派なツノを有しているからきっと間違いないだろう。

どうしたの、君。迷子かい?
この辺りには君みたいな子を見たことはないけれど……。
あれ、怪我してる。

どうも、後ろ足の付け根の部分に刃物が刺さったような傷跡があり、刃物は抜けたらしいが血はまだ止まっていなかった。
これは痛い。
ちょっと待ってね、薬とかはないけど止血くらいなら出来るから。

普段寝る時に使っているブランケット代わりの布を裂き、端と端を結んで長くする。
即席包帯だ。
チョッパー、あなたのおかげで私は今人(鹿だけど)の手当までできるようになったよ……!

傷をグルグルと少しキツめに巻いて、まあ、こんな感じ?
応急手当にも程があるなぁ。でもまあ、わりと上達した方なのだ。4年もあるから、これもしっかり身につけられるといいのだけど。

お水飲む?
あ、飲むのね。ちょっと待っててね。

いっぱい飲むねぇ。どこから来たの。
あっち?というか言葉わかるの?
賢いねぇ。
道がわかるなら早く帰りなよ。
帰り道がわかっているなら、早く帰った方がいい。
きっと家族や仲間が心配しているよ。

もう行くの?そう。
縁があったらまた会おうね。
なんだか、君とはまた会いそうな気がしているんだ。

森の奥に帰っていく鹿を見送る。
なんだか不思議な鹿だったなぁ。
私の言うことを全部理解しているみたいだった。
悪魔の実を食べているわけではなさそうだったけど、人に慣れていた。
飼われてるのかな?

うぅーんと悩んでいると、今度はちゃんとした道の方から元気な足音がやって来た。
ひとつ、ふたつ、……みっつ?

「名前ねーちゃん!遊びにきたぞ!コレ!!」

やぁ、木葉丸君。
今日はお友達も一緒?はじめまして。
よろしくね。

鹿さんこちら

(あの鹿は無事に帰れたのだろうか)

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