2Y→4Y | ナノ


▼ カラスと

よく良く考えれば、木ノ葉丸くんがいいところの坊ちゃんならお付きがいないわけないんだよね、多分。
そうでなくてもちびっ子ってその日あったことを一生懸命話すし。多分それで私の存在を不思議に思ったんだろう。あー、うちの船長も兄2人と駆け回ってる時いろいろ報告に来てくれてたなー。
懐かしい。

監視といっても、一挙一動を見ているというよりは私が不審なことをしないかの見張りのようで、視線は感じるけどあまりきつい印象はない。

木ノ葉丸くんのおかげで、この国?がどのような国なのかが分かってきていて、おそらく私を監視しているのはこの木ノ葉隠れの里の忍のいうやつらしい。
ここだけでなくたくさんの隠れ里があり、いろんな忍術を使う忍びがいるそうだ。
やっぱり、ワノ国と近い性質があるらしい。

で、結論として私を監視しているのはその忍びってやつだと思うので、しばらくは大人しくしていることを余儀なくされている。
おかげで人がいる里の中心街にも行けなくて困っているが、幸か不幸か調味料は分けてもらったぶんがまだ残っているのでしばらくは大丈夫だろう。
しかし、忍というものは動物でもなれるのだろうか。

思考を止めないまま窓から外へと視線をやると、黒々とした美しいカラスが1羽、木の枝に止まりこちらを見つめている。

あれ、絶対に見張りだよなぁ。
餌をせがむでもなければ飛び立つ様子もない。
お利口さんだなぁ……。

たまに声をかけてみたりしてるんだけど、何の反応もしてくれないので非常に寂しい。

そんな無反応のカラスが、激しく鳴く時がある。

「クー!」
「カァー!!!」

……やかましい。

ここに来てから数日後に、ニュース・クーがいつもと変わらない様子でやって来て新聞を配達してくれた。
来たのはまだ数回だが、来る度に例のカラスと激しいバトル(鳴き声)を繰り広げ、どこへとも無く消えていくのだ。
ちなみに、私はここに来てもう随分立つのだが、新聞の日付は全く進んでいなくて余計に訳が分からない。
さて、本日の新聞は……

「名前ねーちゃーん!!!また来たぞー!コレ!」

あー、そうだった。
この時間は木ノ葉丸くんがやってくる時間だった。
冷蔵庫はないこの小屋だが、幸いにも氷室があったので実は本日はとっておきを冷やしてあるのだ。

やぁ、木ノ葉丸くん。
今日はね、ちょっといいものがあるんだよ。

「いいものってなんだ?コレ!」

まだ内緒ー。
手を洗って座って待っててね。
と言うと、いい返事とともに水場へと走っていった。
小屋の中には水道がないので、行先は入口近くの井戸だけど。

その隙に、コップ(もともとあった)を取り出し氷室の中から薄く色付いた液体の入った容器を取り出す。
はい、ハーブティーです。
ハーブって雑草並みに生えるから、小屋の裏手にうじゃうじゃ生えていたのを有効活用した。
コップに注ぎ、桃を角切りにして一緒にどぼん。
ストローなんてないけど、まぁそれもご愛嬌。

そろそろ戻ってくるかと思って木ノ葉丸くんを見てみると、例のカラスに向かってなんか話している。
もしかして、監視って気付いてる……?
だとしたら木ノ葉丸くん、結構才能があるのでは……!?

「こ、こっちみんなコレ!怖くなんかないんだからな!!」

……どうも違うらしい。
まあ確かに、カラスにじっと見つめられると怖いよね。
おいで、木ノ葉丸くん。
そのカラスは何もしないよ。
綺麗な子だし、きっとちゃんとしつけられているからね。
そう言って、監視には気付いてない様子の木ノ葉丸くんを呼び、一緒にハーブティーをごくり。
うん、美味しい。
お砂糖はあまり入っていないけど、桃の果汁が多いから気にならない。
御機嫌な様子でハーブティーに舌づつみを打つ木ノ葉丸くんを横目に、先程読み損ねたニュース・クーの新聞を手に取り





そして、私は知ってしまった。
大切な船長と、大切な弟分。
海軍本部での頂上決戦。


エースの死を。


ただの紙なのに、こんなに冷たい

(どうして私は、そこにいないの)

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