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▼ 木ノ葉丸と

クマによって飛ばされた。
飛ばされたということは分かるが、ここがどこだかは全くわからない。
遠くには人の顔を4つかたどった岩山が見えるけど、見覚えの無い顔だし周りに海も見えない。

ここ、どこ?

宛もなく歩き回ったが海もなければ船も見当たらないので、仕方なく山の中の小屋に身を置くことにした。
雨漏りもないし、生活した痕跡があるのでしばらくは困らなさそう。よし、とりあえずは情報収集だ。


まぁ、情報収集の結論だけいえば、本当にここがどこだか分からない。
偉大なる航路の文字は地図にも見当たらないし、海賊も海軍もどこにもいない。
海はあるらしいが、島から島へと渡る文化もなさそうだった。

詰んだ。

拝啓麦わらの仲間達へ
皆さんの仲間の名前は、どうやら異世界に飛ばされたようです。

はやくシャボンディ諸島に戻らなきゃならないのに、どうやって戻るかもわからない。
考えても仕方が無いことではあるが、仲間達もきっと集まろうと奮闘しているはずだ。
諦めてはいけない。

見知らぬ土地にやって来て数日。
相変わらず帰る目処は立たないが、本日は来客があった。

「ここはオレの秘密基地だぞコレ!!」

可愛らしいお客さんだが、どうもこの小屋を先に根城にしていたらしいので素直に謝りつつ困ってるからしばらく貸して欲しいと頼んでみた。
すると、あっさりとオッケーがでてしまったので、お礼に近くで見つけた野生の桃をご馳走する。
意外と甘いので、元は育てられていたものかもしれない。
とりあえず皮だけ剥いて丸ごと差し出すと、ちょっと驚かれたが喜んで食べてくれた。
うんうん、子供はそうやって元気なのが一番だ。

話をよく聞くと、彼は木ノ葉丸くんと言うらしい。
言ってることややってる事はなかなか的外れだったり子供らしいテンションだが、桃の食べ方が綺麗なので案外育ちがいいのかもしれない。
まぁ、どこのお子さんかは分からないけど優しい子は好きなので、桃をもう1個勧めた。

桃を満足するまで食べたあと、木ノ葉丸くんは「またなー!コレ!」と言って帰っていった。
え、また来るの?

それから数日、木ノ葉丸くんは度々やって来て、毎回差し入れをしてくれる。今日は昨日ご馳走した山菜ともち米のおこわのお礼と言ってリンゴを差し入れてくれた。最高にいい子。
(ちなみにもち米は小屋の中に残っていたもので、調味料は山で迷ったお爺さんをお家に届けたお礼に少しいただいた)
山菜と桃のオンパレードに飽きてきていたのだ。
早速剥いてから切り分けて(うさぎさんも作ってみた)皿にのせて出すと、木ノ葉丸くんが尋ねてきた。

「ねーちゃんはどこから来たんだ?」

どこ、っていわれると困っちゃうんだけど、うーん、遠いところかな。

「遠いところ?帰らないのか、コレ?」

帰りたいんだけどね、帰り方、わかんないんだ。
仲間も待ってるし、仲間と行きたいところもあるんだけど、どうやったら帰れるかがよく分からないんだ。

「……寂しいのか?」

寂しい……、そうかも。ここ最近はずっと周りが騒がしくて、忙しなくて。でも、とても楽しかったから。

「…ねーちゃんが帰りたいって思うなら、きっと帰れる!!」

え!う、うん……。そうだね。……そうだよね。
ありがとう、木ノ葉丸くん。
なんだか元気が出てきたよ。
ここに来てもう2週間近く経つけど、君が来てくれるおかげで1人じゃないからね。

そう言うと、木ノ葉丸くんは照れ隠しにリンゴにがっついた。
あぁ、そんなに勢いよく食べると喉につまらせるよ……って言わんこっちゃない!


騒がしい異世界

(1人じゃないっていうのは比喩でもなんでもなく、木ノ葉丸くんが来るようになってから私に監視がついたって意味なんだけどね)

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