・会話文
・日々也公式発表前の小説
・会話の順は日々也→デリック



「…お一人ですか?」
「ん?俺のことか?俺はまぁ、一人かな」

「では隣失礼してもよろしいですかね?」
「あぁ、いいけど」

「ふぅ…。少し疲れてました。ところで素朴な疑問なのですが、貴方は何故こんな何もない空間に一人で居るのですか?よろしかったらお話を伺いたいのですが」
「別に言いけど、まず自分のこと名乗るのが礼儀なんじゃねぇの?」

「私としたことがとんだ無礼を…。私の名は日々也と言います。ちょっと待ち人に用があって、遠い所からこちらへ足を運びました」
「その、待ち人ってのは多分ここには居ないぜ?俺も一応人を待ってる身だけど俺に用がないなら、多分待ち人はここには居ない」

「…それは、困りましたね。まぁ、少しくらい寄り道をしても罰は当たらないでしょう。では貴方の番ですよ?貴方は何故お一人で?」
「…だってよ臨也は静雄と居るし、サイケは津軽の野郎と居るし、俺には相手が居ねぇんだもん。仕方ねぇさ」

「お相手が居ないというと?」
「俺にもよく分からない。今はまだ、ただ一人で待ってたらいいんだって。誰とも仲良くしちゃいけないんだって。そうしたら均衡が崩れるとかいう話で、俺は一人で居るって訳」

「可哀相なお方ですね」
「ただ待ってるだけだろ?哀れむことはねぇよ。少し暇なだけだし」

「まぁ、そうなのかもしれませんが…」
「大体あんたの目的は分かったけど、あんた自身は何?どんな人?随分臨也と似ているけど」

「変な話ですが、私は自分を持っていないんです。姿形、人格まで何も完成していないものでして…。これは一応仮の姿といいますか」
「ふぅん…?それはいつ出来んの?」

「確か…冬を越すまでには私という存在は完成する、筈です。人格となると、私にも少し予想は出来ませんが」
「なんでだ?性格なんてのは、自分の持ってる最大の個性だろ?それが完成するか分からないってのは、…あー、駄目だ。考えたら頭痛くなってきた」

「あまり深く、考えなさらずに」
「そうなんだけど…」

「まぁ、見る人にとって性格なんてものは変化するものですからね。私も、一体どのように認知されるのか…半分楽しみでもあり、少し不安でもあります。」
「ん…まぁ、難しいところを省くと、要はあんたも待ち人ってことだよな?」

「…そうですね。簡単に言えばそうなりますか」
「なら丁度いい。俺も待ってる身だからさ、一緒にここで待ってよーぜ。一人ってのも案外暇なんだ。あんた自身が出来てから、あんたを待ってる人のところに行けばいい」

「そうしたいのは山々なのですが…、これ以上このまま私が存在してしまうと、少し…後の世に影響が及んでしまうのです」
「……は?」

「もう少しだけ、待っていて下さい。今はまだ駄目なんです。初めて私が実体を持った時、私が貴方と共に貴方を待たせてる人を待ちますから」
「…何、俺さりげに断れてる感じ?」

「はい、申し訳ございません」
「いいっていいって。気にすんな」

「早く私も私に会いたい。そして私を待ってくれている人に会いたい。本当はそのことを待ち人さんに伝えたかったのですが、その前に貴方との約束を守らねば」
「……まぁ、待ってるからささっさと来いよ?俺はもう一人で待つことに飽きたからな」

「…まぁ、善処しますよ」












「デリックー!臨也君がメンテナンスするってー!!」


とたとたと背後から聞こえる足音に振り返ると、仲良さそうに歩くサイケと津軽の姿が見えた。
満面の笑顔を浮かべ走ってくるサイケが俺の胸の中に飛び込んでくるのを、津軽は今にも爆発しそうな怒りを含んだ笑顔で見ている。

「サイケ、こいつは構わなくていいから早く臨也さんのところ行こう?」
「お前、本当俺への敵意隠そうともしないよな」
「嫌われてもいい奴に、わざわざ好意なんか抱かない」
「まぁ、そうなんだけどさ」

正直、一人で待ち続けるのは寂しいし辛い時もある。ある程度離れた距離を保ちながら会話をする今も、辛くないと言えば嘘になる。

二人の姿に嫉妬をしない訳でもないし、孤独感を覚えない訳でもない。いつ来るのか分からない待ち人を一人で待つのは、疲れたというのが日々也に語らなかった心の底にある本音だ。

「…あのねあのね?」
「ん?」
「早くデリックも二人になるといいね、ってさっき津軽と話してたんだよ?」

あっけらかんとした表情で、サイケの言葉は尚も続く。

「デリック一人じゃ可哀相だもん。だから早く俺と津軽みたいに二人になれたらいいねって!」
「…何、津軽。お前心配でもしてくれてんの?」
「心配はしてない。ただ分かるから」
「何が?」
「ヒトリは悲しい。苦しい嫌な感情だって」
「涙出るのは駄目だよ。悲しい時は誰かに慰めて貰うんだよ。」

ばたばたと腕を振りながら言うサイケの頭に、手を乗せる。そのまま両手で撫でる様に髪を掻き乱していく。

「あわ、わわ」

いつか、自分にもこんな風に触れる相手が出来るのか。待ち続けることでその人が現れるのか、何も確かなことは分からないけれど。

「……ありがとな」

だからもし。

日々也が本当に来てくれた時、知りもしない奴を待つのはやめて、日々也の待ち人を二人で探そうかと心に決めた。


ぱちぱち


back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -