・長編においてある
来神組兄弟設定で新誕
・新臨


「俺、今日新羅と寝る」

4月1日、23時37分。
午前中、静雄相手にエイプリルフールを堪能した臨也の突然の申し出に、3人の兄である京平は驚きの瞬きを一つする。

「俺は別にどうでもいい。寝るなら勝手に寝ろ」
「僕も一日くらいなら良いよ」
「珍しいな。お前が新羅と寝たいだなんて」
「気分だよ。気分」

未だに怒りが収まらない静雄の隣でスナック菓子を頬張る新羅が許可を出すと、臨也の表情が僅かに緩んだ。安堵したようなその表情に京平が首を傾げつつも、悪意を感じないことからただの気まぐれなんだろうと判断する。

そうと決まれば、と言わんばかりにスナック菓子を食べている途中の新羅の腕を引っ張り新羅と俺の部屋の方へと消えていく。その姿を眺める静雄が不満げに「俺だけのけ者かよ」と呟いたので、慰めに頭を撫でておいた。そして頭に一つの疑問が浮かぶ。俺は何処で寝ればいいのだろう。

「静雄、久々に一緒に寝るか?」
「…そうだな」
「拗ねんなって」
「ん…。てかあいつ何企んでんだ?突然新羅と寝たいなんて」
「気まぐれだろ?」
「…その割にはあいつ、新羅の手を引っ張りながら笑ってたけどな。気持ち悪い」

ぶつくさ愚痴を言う静雄を見つつ、新羅の食べかけのスナック菓子を食べる。ボリボリという小気味よい咀嚼音を楽しんでいると、「あ」と声があがった。

「明日って2日だよな?」
「ん?あぁ」
「…もしかしたら、」








「…何か僕に話したいことがあるんじゃないの?」
「別に、そんなんじゃないけど」
「じゃあどうして一緒に寝たいだなんて言いだしたのさ」

部屋に連れてくるなり自分だけ大人しく布団に潜る弟に呆れの溜め息を吐く。今頃静雄か京平に食べられているであろうスナック菓子に思いを馳せつつも、布団に包まり芋虫状態の弟の頭をつんつんと指で小突く。

「臨也ー?眠いなら一人で寝なよー。僕リビングに戻るからね?」
「後、4分は駄目」
「何その中途半端」

臨也の考えが分からず、指定された4分後に何があるのかと時計を見る。いつの間にか時間は23時56分。4分後には日付が変わる。

チクチクと時計の針が時間を刻んでいく。その間に臨也に声をかけるも返されるのは適当な返事のみ。後1分で、臨也のいう"4分後"になろうとしていた。

「…新羅さ、4月2日誕生日だよね」
「え?」

突然、本当に突然な臨也の言葉に思考が追い付かないでいると布団からちらり、と覗いている赤い瞳と目が合った。
カチリ、時計が0時になる。

「誕生日、おめでとう」

告げられた文字の羅列が頭の中で意味を成すと同時に、臨也の赤い瞳が細められる。目から下の表情は分からないが、きっと笑っているのだろう。

「あの首無しよりも先に言ってやりたかったんだよ」
「…あまり気分の良いことじゃないなあ」
「嫌がらせだからね」

ケラケラ笑う臨也が楽しそうに、目を細める。普段のようなあくどい笑みではなく、純粋な笑顔は久々に見た臨也の素の表情にも思えた。

「何か欲しいものある?気が向いたらあげるよ」
「じゃあセルティからの愛が欲しい」
「…新羅さ、本当…空気読めよ」
「じゃあ素直な弟とか?」
「もういいよ。何もあげないから」
「冗談だよ。そうだなあ、無難にケーキと京平と静雄の作った料理が食べたいかな」
「………ん…」
「……臨也?寝たの?」

いつの間にかすうすうと小さく寝息を立てる弟の様子をちらり、と見る。見た目は純粋だが、どうして中身はこうも捻くれているのか。
昔から何処か、セルティに対して敵対心を抱いていたことを知ってはいたが、こうも小さなことで対抗されるとは兄として愛されているのかなんなのか。

サラサラの黒髪を撫でる。
大丈夫。俺は確かにセルティも大切だけど、兄達も臨也も同じくらい大切だから。焦らなくても、大丈夫。俺は臨也から離れないよ。

こんな想いを伝えたところで何にもなりはしない。それに、こんなのは俺のキャラではない。臨也が素直じゃないのなら、きっとそれは自分も同じだ。

それでも、まあとりあえず。

「…ありがとう、おやすみ」


ぱちぱち


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