二次被害、身内の場合 [ 2/2 ]

定期テストが間近に迫っている訳でもない、寒さが本格的に強まった12月の頭。
今までなら学校から帰ったら即ベッドで、隠れた趣味のせいで友人を呼ぶ事もほとんどなかった弟の冬弥が、最近物凄いイケメンを連れてくる。
イケメンが好きな母のテンションの上がりように、もう連れてくることはないと思っていたけれど今日も彼は弟の部屋にいる。

3次元からの卒業を果たした私からみても…意思が揺らぐくらいカッコイイ。
けれど弟とつるむタイプには見えない。
そもそも弟がこんなにパーソナルスペースが狭い交友をこんな子としているとは思えなかった。

何だか生々しいのだ、そう思うのもどうせ私が腐っているからなのだけれど、身内をそんな目で見てしまった負い目か母親を部屋に入れるなという弟からの頼みを断れず、かと言って母のせめてお茶でもという言葉も撥ね退ける事も出来ずに来客用のティーカップをお盆に弟の部屋の入口に立ち尽くす。

間髪入れず弟のリラックスした声が返ってきたので扉を開けたのだ。
私、入る前にノックしたんだけど、入る許可も貰ったんだけど。
私の目の前ではどう見ても男2人がイチャイチャしていた。


「ねーちゃん、いつまで突っ立ってんの?」

寒いから閉めてという言葉に素直に従ってしまう。
手に持っているお盆を机の上に置いても2人の距離に変わりはなく。
今時の男の子ってこんなべったりしているものなのかと友人達の行動を思い浮かべるが、いざ当てはめるとカップルにしか見えない。

いや、でももしかしたら背中が寒くて、弟の友人はお腹が冷えていて暖めあっているのかもしれない。
そんな事を脳内で必死に思い浮かべながら2人を盗み見る、決して眼福だなんて思ってはいない。

画面を凝視して女の子を落としている弟の腰を抱いている彼はどう薄目にして見てもそのゲームには興味がなさそうだ。
2人は一体どういう関係なんだろうと妄想の世界に入ろうとする自分を叱咤して、ゲームに夢中な弟は放っておいて、オトモダチの彼に向き直る。

「これ、駅前に最近出来た洋菓子屋さんのところのなの。是非食べてね」

「有難うございます」

そうニコッと笑ってくれる彼に心癒されながらも立ち上がる。これ以上ここにいると自分を見失ってしまいそうだ。

けれどそんな私にはお構いなしに2人は2人の世界を作る。

「あー、最近すごく良い匂いするお店のか」

「冬弥食べる?」

「うん」

そんなやり取りの後に弟の口元に洋菓子が運ばれる。
相変わらず画面から目を離さない弟も当たり前のようにソレに噛り付く。
部屋にはトーンの高い女の子の恥ずかしがる声だけが響き渡っていた。


唯々驚愕している私を不安そうに見ながらオトモダチが口を開きかけているのを視界に留める。
その先は聞いてはいけない、私は私生活の中でも腐ィルターを通して見るようになってしまっただけなんだ。
この場でおかしいのは私。


取敢えず今一番熱いジャンルのお気に入りの2人を必死に思い浮かべながら、彼が言葉を発する前に私は部屋を飛び出していた。


(最近の子たちってそれが当たり前なの!?二次元よりも大変な事になってるじゃない!!)


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