Jujutsu kaisen | ナノ

芽生え

Twitter企画:フォロワーさんと同じお題で夢を書く より。事後、夢主の部屋


 内側から、他人の肉体に臓器を押し上げられる圧迫感に目を細める。力を抜けと言われたけれど、その行為の息苦しさに、結局わたしは終始歯をくいしばって、五条くんが腰を揺らし終えるのを待つことしか出来なかった。こんな行為が世間一般に気持ちの良いものとして広まっているなんて。もしかしたら、世間には、私が思う以上に倒錯的な人間に溢れているのかもしれない。

 初めてのセックスは、私の部屋のベッドで執り行われた。口づけにはじまったそれが、抱擁で終わりをむかえたとき、私は五条くんの身体がしっとりとした熱をおびていることに驚いた。どうやら、五条くんでも汗をかくことがあるらしい。
「おまえさぁ。オレだって人間なんだけど」
 そんなことわかってるけどと言うと、五条くんは少し身体を離して、おでこを私のおでこにコツとぶつけた。それで、なんか他に感想ないの。
「やっぱり、ちょっと痛かった」
「初めてだしね。それに、オレのデカイから」
「お腹のあたりが苦しくて」
「デカイからなあ」
 包み隠さぬ私の不満にも、五条くんは満足そうな顔をしている。へこたれない男だ。そういうところが好きなんだけど、些か、腹立たしくもある。
「今後に期待、だな」
 と言う五条くんの言葉に、私は返事をすることなくベッドをおりた。床に落ちた服を拾い集める。こういうときの着替えって目の前でしてもいいものなのかな。ひっそりと頭を悩ませていれば、背後から、
「あ」
 と五条くんの、何かを見つけたような声が聞こえた。
 どうしたの。と、裸のままくるりと私は振り返る。

 節ばった指先でなぞるシーツには、赤黒い染みがポツと出来ていた。染みは血の痕だった。破瓜のときに出たのだろう。あーあ、と言いながら五条くんをベッドからどかして、シーツを引っ張り外す。幸いにもマットレスまでは汚れていないようだった。
「ちょっと、洗濯機まわしてくるね」
 服に袖を通しながら言うと、五条くんは妙な顔をした。なあ。ちょっと痛かったって、どれくらい痛かったの。五条くんにしては珍しく萎びれた話し方であった。
「どうしちゃったの、急に」
「だって、血なんか出るから」
 本当に珍しく、めそめそと五条くんは言う。
「初めてだしね」
「あんなに解したのに」
「デカイからね」
 気を使って、明るく言ってみる。
「はあ」
 ため息ときた。
「なに、どうしたのよ」
「だって。血って……怪我じゃん」
 しょんぼりと五条くんが続ける。
「オレおまえに、怪我させてんじゃん」
 がっくしと五条くんが項垂れた。
 それに、あははっ、と私は笑ってしまう。五条くんが口を尖らせて私を睨んでくる。人が真剣に落ち込んでいるというのに。いったい何を笑うというのか。まったくもって信じられない。
 厚みのある筋肉を晒したままの五条くんからは、不機嫌な感情までもが包み隠さず放出されている。不貞腐れながら、私のことで落ち込んでいる姿に、ふふっと堪えきれない笑いが込み上げてくる。
 こんな感情は初めてだった。
「痛かったけど、悪くないかも」
 言うと、五条くんは目を大きく見開き、それからすぐに苦虫を噛み潰したように顔を顰めて
「何それ、マゾなの」
 と不服そうな声を出した。
「どうかな。どう思う?」
「知らねぇよ、そんなの」
「今後に期待、ってやつかな」
 クツクツと私は笑う。五条くんがさらに顔を歪めていく。それがどうにも楽しくて仕方ない。
 自分でも驚いている。五条くんの不満をいってもへこたれないところが好きだった。それなのに、私のために傷つく姿をみるのは気分がいい。
 シーツを手繰り寄せ持ち直す。石鹸とは違うヒトの匂いが僅かに香るそれに顔を埋めながら、堪えきれない笑みを隠す。
 きっと世間には私が思う以上に、倒錯的な人間が溢れているに違いない。私はそう、確信している。

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