溶けていく


眩しい光にゆっくりと意識が浮上する。
腕にあった筈の心地良い重みがなくてパッと目を開ければ、腕の下に金髪が見えてクスリと笑みが溢た。
きっと腕が痺れてしまわないように頭を外してくれたんだろうけど、潜り込むのは苦しくなかったのかな?
朝から可愛いがすぎる。
肩まで掛けてくれていた毛布を捲ると胸元に擦り寄るようにすやすやと眠る名前がいた。
朝日に照らされて艶々と輝く髪を撫でる。
昨日は今まで感じた事ないくらいに幸せで気持ちよくて柄にも無く少し泣いてしまった。

おでん屋さんを出た後、名前の家が近いからそこで飲み直そうとコンビニに寄って、悟並みの豪奢なマンションに入った。
エレベーターに乗った時に我慢出来なくて触れるだけのキスをすると首を傾げた名前は『ねぇ、これだけで気持ちいいのって私だけ?』と呟いた。
初めて触れた時と同じ甘く痺れる様な感覚ときょとんとした名前の表情が実は驚きからのものだったって事に限界だった。
部屋の鍵を閉めるなり噛み付く様にキスをした。貪り合うようにお互いがお互いを味わい尽くすように求めあって、二人とも気を失うように眠った。

名前の中に挿れた時幸せで嬉しくて気持ち良くって言葉で表しようがないくらいに感動したんだ。
きゅうきゅう締め付ける名前を見ると手で顔を覆って肩を震わせていた。

『えっ、痛かった?ごめん、我慢でき、』
『そうじゃなくて…何か分かんないけど、涙がでる。すぐる、好き』

繋がったままぎゅっと抱き締めて私も少しだけ泣いた。
愛おしかった。
私達はきっと出会う為に生まれてきたんだと言えば優しく笑った名前を私は一生離さないって自分に誓ったんだ。


「すぐ、る…おはよ」
「おはよ。まだ六時だけど起きるの?」
「ん…」

もぞもぞと毛布から顔を出して私の腕の上にちょんと頭を乗せると薄ら見えていた金の瞳は再び閉じられた。
瞼の下でゆっくりと眼球が動くのに合わせて長い睫毛が微かに揺れる。
足を曲げた名前の膝が私の熱に触れてパチッと目が開いた。

「……ふふっ」
「…笑うところ?」
「ふふ、生理現象って分かってるのに私に興奮してくれたのかなぁなんて思う自分に笑ったの」
「…煽られてるって思うけどいい?」

クスクスと笑う名前の頬に口付けると歯磨きもしたいしお風呂も入りたいと口を尖らせた。
あー本当、全部がかわいくて馬鹿になりそう。
ただの朝勃ちだった筈なのに名前を見てたらおさまるどころかガチガチになったんだからこれは名前の所為だ。私は悪くない。

「傑、お願い」
「あーー…分かった。お風呂でシようね」
「え、ちょっ!」

バッと毛布を剥いで抱き上げると驚いていた名前がケラケラ笑って首に腕を回した。
これは同意って事でいいのかな?
ふふ、本当幸せ。
何度もそう思うけれど、それくらいしかしっくりくる言葉がない。

「傑に会えて良かった。私一番幸せかも」
「…私も幸せだよ。あぁ、本当に早く結婚したい」
「だから早いって!まぁ、でも…うん。傑がいいならウチに住む?」
「……やっぱり一回だけシよう。私午後からだからすぐに引っ越しする」
「ふは、当日の半日で引っ越し出来るわけないでしょ」

まぁ、その通りなんだけど。
シャワーが温まるまで脱衣所で歯を磨いている間にこれからの予定を考えた。
とりあえず必要な荷物だけ運んで、あとは追々業者を手配するとして。ここの家賃と光熱費の支払いを私の口座に変更出来るかの確認と…あ、先に指輪?婚約だけでも…プロポーズもちゃんとしたいし…

「傑。考えすぎ。私は逃げないからゆっくりでいいじゃん」
「……不安なんだ。私の物だって縛り付けておきたい」
「私一途だし、大丈夫だって」
「そういう事じゃない。名前は何ていうか……」
「消えちゃいそう?気付いたら死んでそう?ふふ、よく言われるけど大丈夫。約束したでしょ。傑がいないところで死なないって」
「…お願いだからおいて行かないでくれ」

既に私の心は名前に埋められている。
ずっとどこか物足りなかった、そんな私の隙間を塞いでくれた名前がいないと私は生きていけないだろう。
こんな幸せを知ってしまえばもう戻れない。

「傑もだよ?」
「…え?」
「私だって同じ気持ちなんだから。置いていかないでよね」
「っ、うん。約束する。」

安心したように笑い合いながら浴室の扉を開けた。
暖かい蒸気に心が溶けていく。

互いに欲しい言葉を贈れたんだな。
これからもそうやって生きていけるなら私は何でも出来るよ。


  
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