いつの間にか雪に上司の面影を重ねていた。
白くて、綺麗で、冷たくて、すぐに消えてしまう。掴めそうで掴めなくて、やっと掌に舞い降りた一粒も一瞬で溶けてしまう。私にはどうしようもないのか。
まるで雪の化身──スノーマン、その単語が思い浮かぶと同時に歪んだ顔と腕を貼付けられた雪玉が脳裏を過ぎり、それは違うと悠衣は自嘲気味に笑って首を振った。
そう、彼は雪の化身なんかじゃない。雪とは明らかに違う所が一つ。とても簡単なこと。
寒さに身を縮める長身の男の姿を想像して、悠衣は大股に雪道を歩いた。
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