曖昧リアリティ


『同窓会、行く?』

『行かない』


「なんだぁ…」

携帯を折りたたみ、白い天井を見上げた。

今、当時の委員長を中心に安萬小学校5年3組の同窓会が企画されている。思えばあれから十年。楽しかったあの頃を思い出して私は意気揚々と参加した。
オンラインに挙げられた参加者リストは着々と増えてゆく。しかしそこにあいつの名前はなかった。

毎日毎日昼休みや放課後になると決まって外に出て一緒に追いかけっこをしたあいつ。夢中になりすぎて日直の仕事を忘れて怒られたこともあったっけ。
懐かしさにたまり兼ねて「やあ、元気?」なんてノリでメールしてみたはいいものの返って来たのはつれない返事。

別に構わないじゃないか、と私は自分に言い聞かせる。ただの男友達じゃないか。異性として好きだと思ったことはないし、中学に入ってからは特につるむこともなかった。今だってたまにメールのやりとりをするぐらいだ。
高校を卒業して住居も互いに遠く離れてしまったし、あいつもあいつで忙しいのだろう、仕方ないさ。

──なのになんだ、このもやもやは。

同窓会への楽しみが、一気に半減してしまったような心地がした。


翌日。
眠る準備に入った所で携帯が鳴った。受信メール有り。
あくびをしながらメールを開くとそこに表示されたのはあいつの名前だった。

『俺、やっぱり参加するわ(笑)』

本文はただそれだけだったが、身体がほんのり熱くなった。反射的に携帯を閉じた。胸がどきどきする。口角が吊り上がっている。私は、笑っている。

やばい、三年ぶりの再会だ。
どんな身なりになっているんだろう。何を話そう。どんな格好をして行こう。
もっと久しく会っていない友達が他にもたくさんいるはずなのに、気付けば私はあいつのことばかり考えていた。
ちくしょう、なんだってんだ、あいつのくせに!

悔しいからメールの返事は明日にすることにして私はベッドに潜り込んだ。
…いまいち寝付けなくてそれから何度もメールを見返してしまったけれど。これはもしかしてマジのやつか。そんなバカな。
この仕返しはきっと当日に。


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