ゼミの教授の誕生日会をね、サプライズでやりましょう。って、笑ったその人は少女みたいな無邪気な顔をしていた。
都合が悪いフリして発表の機会をずらしたのも彼女の計画。ぽっかり空いた時間は自由議論に充てられることになっていた。その時にハッピーバースデーを叫んで、買ったケーキやお菓子を皆で食べるそうだ。
私はおおいに賛同した。そして悔しがった。私はその日どうしても外せないガイダンスが入っていて欠席しなければならなかったから。
この気持ちは偽りではなかった。素直に素敵だと思ったし、あの教授がどんな顔するか見てみたかった。私も皆と笑ってケーキやお菓子をつつきたかった。
ところで、教授の誕生日は私の誕生日の翌日だった。
日付を見てあれと思ったが、そんなこと言えなかった。自分のことも祝えというふうに思われたら嫌だった。
私が生まれた日、周りに不幸をもたらす存在が生まれた日。私が一番後悔する日。一年間、何も得ることなく、死ぬこともできずにただ歳の数だけが増える苦汁を味わう日。
私が生まれなければよかったと思った翌日に、あの人は大勢の生徒から誕生を感謝されるのだ。
私は笑ってられるだろうか?祝福の言葉なんて言えるだろうか?
私がいてもきっと雰囲気を悪くするだけだ。だから、行けなくてよかったんだ。
教授は私のことが嫌いだろうし、最大の誕生日プレゼントとなることだろう。
おめでとう、先生。おめでとう。
あなたの幸せを願って、私は一人、プリンを食べる。甘いはずのそれは少ししょっぱかった。
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