その名は伊藤


思春期の青臭い苦みを引きずったまま、私は大学生になった。
私は、俗に言う『ネクラ』だ。

なんでもネガティブに考えてしまう。もう少しポジティブに生きろと他人は言うが、私のどこを取ればポジティブに生きることのできる要素があるのだろうか。否、私にとってはこうして今生きていることが精一杯のポジティブなのだからどうか許してほしい。──本当は、死ぬ勇気さえ無いだけなんだけど。

友達はいないわけではない。が、一般的にはかなり少ない方だ。
私はいつでも他人の目を気にして、無理矢理な笑顔を張り付けて、普通の人のフリをして過ごしている。
それでも隠し切れない根の暗さを、「シャイ」とか「クール」とかいう言葉に甘えて過ごしている。
周りの人間にネクラの片鱗を見せれば暗いと言って笑い飛ばされるが、私の本性はこんなものではない。私の心の内を晒せばドン引きされることは間違いない。
だから私は誰かに私そのものを伝えるわけにはいかないのだ。
私は、私の中で語る。私は私に私の物語を聞かせ、私は私に私の物語を聞く。


これは、そんな私の記録。


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