「はい、それでは一分間で自己PRをお願いします」
私は、とある企業の面接に訪れていた。
初めてではない。他にも数社受けたが、ここで働くのだという意識がいまひとつ湧かず、ぼうっとしていた。
自己PR。これまでに何度したことだろう。
どんなに自己分析しても、たどり着くのは自分がクズだという事実。誇れるものなんて何一つない。
唯一他人より秀でていることは、強いて言うなら持ち前の根の暗さです。
なんて言えるわけもないので、「自分を客観的に鑑みて反省することができます」とか「我慢強いところが長所です」とかそれっぽく言い換えてみたものの、所詮良いように解釈上しただけのそれは自分でもあまりピンと来なかった。
「──では、あなたが学校生活で最も励んだことについて教えて下さい」
面接も後半になって来ると、試験官の顔に影が差し始める。
はいはい、君の話なんてどうでもいいよ。時間の関係で形式上聞いてるだけだから。
彼らの眼がそう語っている。
だったら早めに切り上げてくれても良いのに。そう思いながら私はまた方便を重ねる。
『慎重に選考いたしましたところ、誠に遺憾ながら採用を見合わせていただくことになりました。あしからずご了承くださいますようお願い申し上げます。
貴方様の今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます。』
数日後届いたお祈りメールにも、そりゃそうだろうな、とどこか他人事だった。
できることならこのまま無職でいたいがそれは世間が許さない。税金だって払わなければいけないし、奨学金を返さなくてはいけない。
卒業する前に命を捨てるのが一番平和で手っ取り早いが、さんざん両親に食べさせて貰っておいて一文も返さずにトンズラするのもばつが悪い。
やはり正々堂々職を手に入れるしか道はないのだ。…私を雇う会社なんてよほど人事に見る目がないか人手不足なのだろうけど。
卒業まで残り一年をとうに切っている。無駄に疲れさせられただけのパンプスとスーツを脱ぎ捨てて、私はベッドに脱力した。
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