「火神ィ、おかわり」
ずい、と目の前に差し出された空の椀を無言で受け取る。自分で行けよとかいう言葉はうまそうに餅を頬張る青峰を見ていたらなんだか言えなくなってしまった。仕方なしに立ち上がり台所へ。青峰は俺の椀に入った雑煮をつついていた。待てもできねえのかよ。
「おら」 「お、サンキュー」
新しい椀を差し出すと、青峰はさっさとそれを受け取ってまた食べ始めた。俺は向かい側に座り、少し冷めてしまった雑煮をすする。なんとなく付けているテレビからは、頭の軽そうな奴らの笑い声が永遠と。なんで正月番組ってこんなにおもしろくねえんだろうなあ。青峰がテレビを見もせずにぼやく。さあな、俺が知るかよと適当に返事をした。
「これ、ほんとうめえわ」 「そうか」 「何でお前、女じゃねえんだろうな」
青峰はさっきテレビがつまらないとぼやいたのとおんなじ様な口調でまたぼやいた。なんでおまえおんなじゃねえんだろうな。
テレビからは相変わらずからっぽな笑い声が響いている。一人で暮らすにはやや広い部屋には青峰がずるずると雑煮をすする音が響いていた。俺はさあな、と返事をした。それ以上何もいえなかった。だって、そんなの。それこそ、俺が知るかよ畜生。
/だってこれが最上
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