「トリックオアトリートなのだよ」

無言でずい、と手を伸ばしてくる緑間に苦笑しつつ、その手にチョコを握らせる。真ちゃんもこいうことすんのね、意外。

「因みに俺はお菓子を持っていないのだよ」

これまた意外。人事は尽くすのだよとかいって自分もばっちしお菓子用意してんのかと思ったのに。
てゆうか、あれ。それって。

「真ちゃん」
「なんだ」
「…トリックオアトリート」
「…」
「お菓子は?」
「…だから、ないのだよ」
「じゃ、じゃあ、」
悪戯してもいいってこと?

「…お菓子がないのだから、仕方がないのだよ」

最後の方はぼそぼそと声が小さくて聞こえなかったかが、真っ赤な顔を見れば大体察しがつく。てゆうか真ちゃん、その顔は反則っしょ!

「あーもー真ちゃんかわいすぎ!」
「た、かおっ…!」

堪え切れずにぎゅう、と抱き締めた。緑間の手がわたわたと暫く宙を掻いて、やがてきゅ、と俺の学ランの裾を掴む。ぷつんと何かの切れる音。ああもう駄目だ、理性の限界。

でももう今日は、このまま食べちゃってもいいよね?



/Trick and treat ?