ひとりじゃない

懐かしい香りがする。いつ何処で嗅いだか分からないけど、最近ではないような。
その落ち着くような香りが思い出せない。

「ん・・・」

少し頭がぼーっとし、暫くして自分がベッドに寝ている事が分かった。ゆっくりと目を開きがながら、身体を起こしていく。


ここは何処?


辺りを見渡すと、全く身に覚えのない一室。ホテル等の様な宿泊施設の様子は一切なく、机の上に置かれたマグカップや読みかけの本が、そこで誰かが生活をしている事を表していた。まだ寝起きの様子の栞は、何か事件に巻き込まれたのかと焦り、急いで携帯を探し出すが見つからない。よく見ると、自分の知らない服も着ている。白いTシャツ1枚でズボンは無く、大きさ的に男物で下着は全て隠れた。
そもそも自分が何故ここに居るのかが分からなく、ベッドに腰を下ろし考えていると扉が開く。

「起きたか」
「れ、蓮二・・・?」

柳の登場に益々訳が分からないでいた栞は再び辺りを見渡す。よく見ると隅に見覚えのあるテニスラケットやウェアが置いてある。

「ここって、蓮二の家?」
「そうだ。その様子だと、昨夜のことは覚えていないみたいだな」
「ごめん・・・」

柳は無理もないといった様子で、1枚の封筒を手に持ち「これを見ても思い出さないのか」と問いかけた。白い綺麗な封筒に達筆な字で柳の名前が書いてあり、裏には栞と真田の名前が書いてある。

「あっ」

思い出した。昨夜、弦一郎との結婚式の招待状を手渡しできる人には手渡しをするってことで、蓮二に仕事終わりにバーで待ち合わせをした。少し話しながら、お酒を数杯飲んだのも覚えているけど・・・そこからの記憶がないような。

「お酒を飲んだことは思い出した。きっと飲み過ぎちゃって、蓮二にお世話になったのかな?とりあえず弦一郎に連絡しなきゃ、携帯知らない?夜帰らなかったから心配してると思うから」
「その心配はない。俺が栞の携帯から連絡しておいた」

目の前に既にロックを解除された携帯を出され、やり取りを見せられる。
その日は前もって真田には帰りが遅くなるかもしれないと伝えていたが、あまりにも帰ってこない栞を心配して、電話が3回ほどかかってきていた。最後にメッセージが入っており、その返信内容に驚きを隠せなかった。
まずは無事だということ。その次に、帰る電車がなくなったから友達の家が近くで、泊めてもらう事にしたということ。よく使う絵文字の位置や文章の書き方、友達の名前が、自分そのものだったのだ。真田はそれを信じている。

「こ、これ蓮二が・・・?」
「そうだ。前の文章等をみれば、癖なんて直ぐに分かる。昔から栞は分かりやすいからな、携帯のパスワードの掛け方も変わっていない。栞もそうだが、俺と会うことを了承した弦一郎は不用心だな、よっぽど俺のことを信用しているんだろう」

ゾッとした。
人の携帯のロックを解除し、他のメッセージを読み漁りデータを収集し栞になりすまして返信をしていたこと。あまりにも冷静な柳の表情や行動を見て危機感が一気に増した。

とりあえず早くここから出よう。持ってた鞄や服はリビングとかかな。とりあえず、蓮二を刺激しないように出て帰れば良いんだ。

「連絡までしてくれて、ありがとうね。本当、蓮二は世話好きなんだからー。長居しちゃって悪いから帰」

そう言いながら扉の方へ向かおうと腰を上げようとすると、思いっきり肩を押されベッドに倒れ込んだ。頭が一瞬グラッとし動揺している栞を見て、柳は微笑んでいた。



「久しぶりに2人になれたんだ、ゆっくりしていけ」



高校3年から大学2年の間、私達は付き合っていた。同じクラスメイトとして仲良くなり、惹かれていった。蓮二は優しくて気が利いていて、デートのプランも一緒に決めてくれる。好きだったけど、大学時代に自分の進路に迷いが出て自暴自棄になっていた頃、蓮二は蓮二で忙しく疎遠になり、話し合いの結果別れることにした。
3年になって、同じゼミだった弦一郎と出会った。彼はいつも眉間にシワを寄せているイメージで、堅苦しい姿に戸惑ったが、研究テーマが同じということで少しずつ話すようになった。堅実な姿が新鮮で興味を惹かれ、時々笑ったり照れたりすることが楽しくて一緒にいることが多くなった。その後、交際を4年経てプロポーズされ婚約者となった私の状況を、弦一郎の友人でもある蓮二も知っている。

「いや、帰るよ。弦一郎が待ってるから」
「本当に結婚するのか?」

危機感に加え恐怖心も合わさり近付いてくる柳を避けようとするが、じりじりとベッドの隅に追いやられ、柳の身体が近付いてくる。柳の手が栞の頬を触ろうとするが上手く手を払い、この状況から抜け出そうとするがそうはいかない。

「聞いているだろう。答えろ」
「っ・・・す、するよ。私は弦一郎と結婚するの。だから招待状を渡したでしょ」

柳の目が急に冷ややなものになったのを感じた。手首を押さえられ身動きがとれないようにされると、唇を封じられ生温かい舌で口内を犯され始める。

「っ・・ぁ・・やめ・・・って」

手際良くTシャツを脱がされ、唇はそのままに下着もあっという間に脱がされてしまう。胸の膨らみに手を掛けると栞は抵抗し始めるが、力では圧倒的に柳の方が上。力を込めた部分が赤くなるだけで、力を込めた分だけ柳も抑える力を込めてくる。

「あぁ・・・蓮、二・・っあ・・ぁ」
「感じ方も変わってない。むしろ、昔より感じているようだが・・・濡れすぎだな」

付き合っている間、何度もお互いを求めた。だから、感じるポイントも何もかも御見通し。
気が付けば股を開かされ、指の腹が筋に沿って前後する度に栞は身を捩らせた。別れて随分経つというのに、柳の指の動きがあの頃を思い出させる。

「弦一郎の事だ、夫婦となる前にこんな事はしないんだろう」

これも御見通しだった。夫婦となって初めて交わることになる事も知った上で付き合っていた訳だが、微かに栞は擬かしく感じていた。水音が溢れるそこに指を入れられると、抵抗していた手はいつの間にか緩み、久しぶりの快感に耐える。

「っあ・・ねぇ、も・・っう・やめ、てぁああ」
「無理だな。あの頃、俺はお前と別れるつもりは無く、結婚も考えていたというのに」
「・・っあ・・ぁん・・・・い、や」
「何だその顔は」

顔を赤らめ瞳をウルウルとさせる栞は、柳が良いところを外している事をやめて欲しい訴える。だが、幾ら待ってもポイントを外し続け焦らしていく。

「言いたいことがあるのか?」
「ぁ・・わか・・ってる・・くせ、にぃ・・あ・・あぁ」
「昔みたいに言わないと分からないぞ」
「んぁ・・蓮二ぃ・・ぁああ、い・・かせてぇ」

だらしなく口を開け懇願すると、柳は指を増やし溢れ出るソコにあるポイントを勢いよく責めると、栞は大きく仰け反り達した。
快感に浸っている間に柳は身にまとっているものを脱ぎ出すと「後ろを向け」と栞を無理矢理四つん這いにし、抵抗するまも無く勢いよく質量のあるモノを挿入された。

「あぁぁあ!!やめてぇ・・あぁ」
「久しぶりだろ。楽しめ」

片腕を後ろに持たれ、ズンズンと容赦なく腰を打ちつけられる。久しぶりの行為に苦しさと痛みを感じたが、身体は覚えているのか徐々に快感へと変わっていく。達したばかりの栞の身体は敏感に反応し続け、真田という婚約者が居ながら無理矢理犯されている事に感じてしまう。

「っ・・感じているのか?犯されている事に」
「蓮、二ぃ・・あん・・っぁあ」
「弦一郎は、こんなに乱れる栞をまだ知らないなんてな」
「やめ・・ぁあ・・・ぃっちゃ・・あぁああああ!!」
「・・おい、勝手にイッたのか?」
「・・・・っ・・もぅ帰して・・・よ」

生理的な涙が流れる。乱れる息を整えようとしても、身体がビクビクとして上手く整えられないでいた。ズルッとモノを抜かれ仰向けにされると、休む間も無く柳が覆いかぶさる。
正常な意思をまだ持つ栞は、柳から離れようと抵抗してみせるが上手く力が入らず遇らわれ、また挿入される。

「ぁあっ・・っあ・・あん・・や、め・・ぁぁ」

栞の意思とは反して、角度を変えながら数十分間打ち付ける腰に反応する身体は柳の思う通りだった。少しでも反応が鈍れば胸の赤い蕾に口を当て舌で転がすと、また身体は反応し楽しませる。

「ん・・っあ、ぁぁ・・・げ、弦一郎ぉ・・あぁ、助け・・あぁ」
「無駄だ。俺は今でも・・お前が欲しいと思う」

耳元で囁くように言われると、深く入るよう腰の角度を変えスピードが一気に増した。意思をハッキリ持たなくとも、何が起きようとしているのか本能的に分かり再び逃げようとするが、組み敷かれる。

「あぁ、やめて!!!んぁっ・・ぁあ・・やめって、れん・・っじ」
「っ・・今日だけは許せ」
「ぁぁあっ・・そ、れだけっ・・は・・やめっ・・ああ」
「受け止めるんだぞ」
「嫌っぁああ、ぁぁ・・あんっ!!ぁあ・・・ああぁぁあああ!!ぁああああ!」


ようやく終わった行為だが、中に出された白濁とした液が終わったようには思えなかった。柳は乱れた呼吸を直ぐに整えると、栞から離れ貰った招待状の中身を取り出し日付を確認していた。栞は早くそれを身体から出したいと思っていたが、身体の怠さと放心状態で動けず静かに横たわったままでいた。

「式までに着床しているか結果が出ると良いな」
「っ・・冗談でしょう・・ねぇ・・」
「俺は冗談なんて言わない。酷いな、栞は俺のことを良く知っているだろう」

いつまでも淡々としている姿が怖く、涙が枕を濡らしていく。
身籠ってしまったら、今後真田とどう過ごせば良いのか、この後何もなかった素振りなんて出来そうにもない。最悪の場合、婚約解消なんてことになれば・・・と最悪なことしか想像ができなかった。

「蓮二・・・」
「なんだ?」
「・・もしかして、都合が良くても何度も会う予定を変更させたのは、この日を狙っていたからなの・・?ねぇ、お酒に何か入れたの?・・・答えてよ」
「珍しく勘が良いな。安心しろ、栞は誰にも捨てられることなんてない。身籠ったら俺のところにくれば良い」



そう柳は優しく栞に声をかけた。



*end


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