看病人 vol.2

しっかりと目を見つめられては、頭がボーッとしてくる。まだ額を合わせたまま、もう一度聞くと栞は小さな声で「少し」と答えた。控えめに言ったわけでもなく、栞の本心。

「ほんまか?高校の時から想っとって、職場も一緒なのに少しなん?」
「ほ、本当です・・・。っというか、なんで知ってるんですか」
「見てたら分かる」

顔も至近距離で見つめられて、更に低い声で話されては意識していないのにも関わらず心臓はドクドクと脈を打つ。まだ額を合わせられている忍足と、距離を取ろうと腕や肩に手を添え力を込めるが、力が上手く入らない。

「風邪、移りますよ」
「栞ちゃんの風邪やったら歓迎するで」
「この状態いつまで続ける気ですか・・・」

少しニヤッとしただけで何も答えてくれない。先輩は高校の時からこんな感じだったのかと目を伏せ、なるべく意識しないようにする。そうすると忍足は額を合わせるのをやめ、栞がホッとしたような顔を見せると忍足は耳を甘噛みした。


「目を逸らした罰や・・・」


血流の流れが速くなり、顔が赤くなるのが分かる。

「っ・・・ぁ・・」

甘噛みに加え小さな耳のうちに沿って舐められると無意識に声が出た。更に「なぁ、感じとるん?」と耳元で言われると、体の怠さと合わせて脳が溶けてしまいそうになる。
手を絡められ忍足の体重を感じ、ベッドが軋む音がした。もうどうにでもなってしまえと思ってしまう栞。

「さっき飲んだ薬。何の薬やったっけ?」
「え・・か、風邪薬」

また耳を甘噛みを再開され声が出る。忍足の質問が全くわからない。
風邪薬と説明をされ飲んだあれは、風邪薬じゃないってことなら・・なんの薬か。
栞は考えようとするが、やはりそれどころじゃない。身体がどんどん熱くなり、じわっと下着が濡れるのを感じた。

「なんや目ウルっとさせて。誘っとるんか?」
「・・っ・・・」

恥ずかしがる栞を見て、忍足またニヤッとした。

「媚薬や」
「嘘・・・」

こんなにも身体が熱くなり、感じてしまうのはそのせいだと信じたくなかった。決して唇を合わせようとしないのが焦ったく感じる。
忍足が近づくと栞は観念したかのように目を閉じる。





「嘘や」





少しずつ目を開けると、忍足と少し距離ができている。

「ちょっと意地悪してもうた」
「・・・なんでですか」
「そりゃ、栞ちゃんのことが好きやから」
「嘘」
「これは本当」

正直もう何が本当かわからない。でも、真っ直ぐな目はしっかりと栞を捉え、身動きができない。媚薬が嘘ということに落ち着きをみせてもいいはずが、全く落ち着かない。むしろ少しずつ心拍数が上がっていく。

「ん?もしかして、キスされると思った?俺は付き合ってもないのに、そんなことせえへん」

無意識に下唇を噛んでいた様子をみてそう言うが、キスはしなくとも額を合わせたり耳を甘噛みするのかと思った。
しかし、期待してしまった自分が恥ずかしいと栞は顔を隠すが、両手首を持たれる。

「図星なところもかわええな。俺と付き合ったら体調崩しても大丈夫やで、医者やし。将来的に安心してもええよ」
「忍足先輩・・・本気ですか?」
「本気も本気。もう一度言っとく、俺は栞ちゃんが大好きや」


ー♪


栞の携帯が鳴った。
どうやら電話で、忍足はチラッとディスプレイを見て微笑みながらベッドを降り上着を羽織る。

「その電話宍戸からやって。・・なぁ、返事は体調治ってからでもええから考えてや。また辛くなったら呼んでもええし」
「・・・・」

微笑んで「その電話、出るかは自由やで」と残して、忍足は部屋を出て行った。


ー♪


携帯を取りディスプレイの表示をみる。そこには確かに「宍戸先輩」の文字。
胸に手をあて、まだ心臓がドキドキしているのを感じる。忍足の目、声、手の感触が少しの時間で身体に染み付いてしまったようだった。


「先輩・・・」





栞は、宍戸の電話を取ることができなかった。




*end


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