急に人寂しくなることなんてよくあることだ。眠気に負けてうたた寝するのと同じくらいには。だから自分達はずっと寄り添っているのだけれど、それでもまだ、人の体温が欲しくなったりする。例えば卵を孵す為の温度、例えば冬のこたつの温度、例えば泣いてる時に撫でてくれる手の温度。どれも違う暖かさ故に、欠けると妙に寂しくなるのだ。

「寒いね」
「うん」

握っている手は、ちょっと細くて骨っぽい。相対して自分の手はきっと柔らかくてぷにっとしていることだろう。それでも伝わる温度に大きな違いは感じられなかった。どくどくと響く鼓動も変わらなかった。一定のリズムで刻まれるそれ。頸動脈から送られてくる音もまた、安心させる体温の一部だった。

「そういえばこの前三之助がね」
「うん」

瞳を閉じて、優しく頷きながら彼は笑う。
笑った顔が綺麗だ。長い睫毛の影が落ちる。傍にいて喋れば喋るほど、自分も綺麗な気がして心地良かった。

「それは大変だったねえ」
「うん」
「…ねえ数馬」
「なあに?」
「口付けを、しようか」

愛情を確かめるためではない接吻。かといって、浅い関係ではないもの。つまるところのそれは、ふとした時の抱擁のような柔らかい戯れだった。

「いいよ」

重ねるだけ。口付けの数は、寂しさを埋める温度の代わりをしてくれる。彼は寒かったのだろう。いつものように優しく、手を握ることと変わらない唇を合わせた。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -