「例えばここに、一本の団子がある」
彼の指に摘まれているのは、3つの餅が刺さったごく普通に売られている団子串だった。何だ何だと思う内に、彼は側にある皿へと団子を外す。三角形に置かれたそれに向けて、三郎はにこやかに指を指した。
「これが雷蔵。これが八。そしてこれが俺」
彼から見て右の順に指を動かしながら喋るのを見る所、どうやらろ組の三人は彼によって団子に例えられたらしい。全くもって意味がわからない。彼のやることは突拍子もないことが多いが、今日のこれもなかなか理解に頭が追い付かなかった。
「な、雷蔵!君ならどれを食べる?」
「…へ?」
またまた彼は。自分に迷い癖があるのを知ってこんな問いかけをする。だけど真剣に考えないのも嫌だから、やっぱりまた迷うことになるのだ。
ということで考える。さあどれだ。自分、八左衛門、三郎。味は全て同じだ。何を基準に考えたらいいのか。好きな人順か。でも三郎への好きと八左衛門への好きは違うから、また狂う。はてさて。
散々迷ったあげくに、自分から見て左の団子を摘む。これかな、と呟くと、彼は不満気に声を上げた。