翌日から始まったホグワーツ生活は、予測を上回って面倒だった。




大きな城である校舎に加え、魔法の入口と出口が一定ではない。




お陰でイメージマップを完成させるのに無駄な時間を費やした。




授業というのも厄介だった。




私が機械だからかは知らないが、呪文というものがからっきしだったのだ。




マクゴナガルの変身術の授業では何とか誤魔化したが、これから先は危ういだろう。




一方ユキはといえば、自ら進んで何かする気は皆無らしく、毎日猫と戯れながらのらりくらりとやり過ごしていた。




これでも鼠を完璧な待ち針に変えることが出来たのだから、彼女は天才肌なのだろう。




まぁ、座学はボロボロだが。











生徒達の話題は専らハリー・ポッターのことだった。




廊下を歩く度にヒソヒソと囁かれ、好奇の目に晒される彼を見ながら、「大変そうだなぁ」と呟いていたユキは記憶に新しい。




そんな中、初の魔法薬学の授業の日がやってきた。




眠そうに目を擦るユキを引っ張って地下へ行き、教室の一番後ろ端を陣取る。




猫は、寮で留守番だ。




スリザリンとグリフィンドールの合同授業ということもあって漂う雰囲気は何となくギスギスしていたが、まぁ私達には関係ない。




やがてスネイプ教授が現れ、授業が始まった。




こくりこくりと船を漕ぐユキをつついて起こしつつ、スネイプ教授の長い演説やらハリー・ポッターいびりを聞き流す。




やがて簡単な薬の調合を指示され、私達もそれを開始した。





「…どうすれば良い?」



「…私が材料を用意する。ユキは順番に鍋に入れて混ぜて」



「ん」




それなら計りも必要ない。




手に持てば重さは分かる。




こくんと頷いたユキの前に順番に材料を並べていく。




ユキはうつらうつらしながらもしっかりと大鍋を掻き回し、さっさと薬を完成させた。




ドラコ・マルフォイ以外の殆どの生徒にダメ出しをし終えたスネイプ教授が歩いてくる。




そして小瓶に詰められた薬を手に取ると、




「ほう…」





と感嘆詞を洩らして、また歩いていった。




「…えええ」



「どうした、ユキ」



「…いや、何でもない」



「そうか、」




減点されなかったのだ。



それなりのレベルに達してはいたのだろう。




この後ロングボトムの鍋が縮んで薬が零れるというハプニングもあったが、私達から離れた場所だったため特に気にすることもなかった。





「グリフィンドール10点減点」





私達の寮監は不公平の権化だった。




















 


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