私―――正確には"私達"はどうやらハリー・ポッターの世界に来てしまったらしい。




原因はほぼ100%、次元移転装置の破損。




そしてその破損の原因となったのは恐らく…




「………。」



「………。」



「にゃー」




今回の"事故"に巻き込んでしまったのであろう少女の腕の中でキョトンとしている、この猫。



少女の方を見れば、そちらも同様にキョトンとして首を傾げてきたので、責任の追及は一旦置いておくことにした。



前列の方でマクゴナガル女史が組み分けがどうのこうの言っているが取り敢えず放っておく。



少女に名前を訊くと、彼女は小さな声で「ユキ」と答えた。




「ユキ」



「何?」



「あまり離れない方が良い」



「分かった」




やがて大広間の扉がゆっくりと開いていき、私達の目の前にはイメージでしかなかった光景が広がっていた。




「あの空、本物じゃなくて魔法でそう見えてるだけなのよ。『ホグワーツの歴史』にそう書いてあったわ」




栗色の天然パーマの女――恐らくハーマイオニー・グレンジャーがそう言ったのにつられてユキと猫が上を見上げる。



確かに、本物と見紛う夜空だった。







沢山の在校生に囲まれて組み分けの儀式が始まる。




次々と新入生が呼ばれる中、不意にユキが私の袖を引いた。




「…名前」



「…私の?」




こくりと頷く。



同時にハリー・ポッターの名前が呼ばれ、広間にどよめきが広がる。



名前…。私の名前か……。




………。




「…マオ」



「マオ?」




私が頷くと、分かったと頷き返してくるユキ。



おもむろに抱えていた猫を私の方へ差し出すように見せてくる。




「…猫さん!」



見れば分かる。





「えー…次は…」




いつの間にかハリー・ポッターの組み分けは終わり、ざわめきは収まっていた。




「Ms.ユキ」



「!」




ユキが猫を抱え直し椅子の方へ向かい、



「………お願いします」




マクゴナガル女史に注意され、猫を預けに戻ってきた。



私が猫をしっかり抱いたのを確認して椅子に戻って腰掛ける。



古臭い帽子が彼女の頭に被せられ、腕の中の猫が小さく鳴いた。















 


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