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 そんな最中瀞霊廷が再び殺気立つ。

 空座町東部に『成体』の破面の二体の反応が探知されたのだ。現世で戦闘にあたったのは、茶渡泰虎、井上織姫、黒崎一護、そして浦原喜助と四楓院夜一。上記破面二体は直後に撤退したものの、多くの一般市民を犠牲とした。この事態を重く捉えた尸魂界は、日番谷冬獅郎、松本乱菊、阿散井恋次、斑目一角、綾瀬川弓親、朽木ルキアの六名を現世へ派遣。そのわずか数時間後、再び別個体の破面六体が現世へ来襲。その内五体は討伐に成功するも、黒崎一護が戦闘にあたった一体は取り逃がす結果となった。

 藍染惣右介の目的は『王鍵』の創生。それに必要なのは、十万の魂魄と半径一霊里に及ぶ重霊地、つまり空座町そのものである。何としてでも奴を止めなければ、現世も尸魂界も崩壊を免れない。決戦の火蓋が切って落とされる冬まで、短い時間ではあるが準備をしなければならない。

 皆が様々な想いを胸に孕んでいた、そんな矢先。
 空座町に三度破面の来襲。時を同じくして尸魂界にて修行を行っていた井上織姫が、二名の死神と共に断階を抜け現世へと戻る途中破面と接触し、自らの意思で、虚園へ向かった。
 それに伴い現世へ派遣されていた六名は尸魂界へ帰還。しかし、その数日後には阿散井恋次と朽木ルキアの両名が独断で虚園へ発った。

 山本総隊長は藍染の真の目的が判明した時点で、現世に居る浦原喜助に二つの指令を出していた。一つは、隊長格を虚園へ送ること。もう一つは、全隊長格を空座町で戦闘可能にすること。浦原及びは技術開発局はこの指令を全うする為に転界結柱という装置を作り上げる。それは空座町を流魂街にそのまま転送するという至って単純かつ困難なものだが、彼らはものの数日でそれを完成させた。

 そして檜佐木に与えられた指令こそが、浦原が作り上げた転界結柱のひとつを守護する事である。
 
 隊長権限代行として隊首会に参加していた檜佐木は、隊舎に戻るや否や深いため息とともに椅子に沈んだ。数刻に及ぶ長時間の会議が余程堪えたらしく、女性隊士が気を利かせて淹れた煎茶にも気が付かない。
 
「明日」

 檜佐木は椅子の背もたれの上に頭を乗せ、力なく呟いた。

「明日の早朝に、尸魂界を発つ。その間十三隊の総指揮は一番隊の沖牙三席が執るそうだ」

 その言葉に「こっちの事は任せてください」と軽く答えたのは、四席の物江だった。それは場にそぐわない変に明るい声色だったが、彼なりに他方に気を遣っていることは明らかだった。彼の表情にもまた、檜佐木と同じように疲れが見える。

「ってことで悪ぃが、今日は早く上がるわ」
「はい、お気を付けて」
「物江もちゃんと休めよ。娘さん、まだ小さいんだろ?」
「お気遣いどうも。落ち着いたら心ゆく迄家族サービスしますので」
 
 そんな二人から遠い席で一連の報告書を読む篁は、一人、手の甲に爪を立てていた。

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