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 そんな、いつもとかわならい日常が何年も、何百年も続いていくと、わたしたちは無意識に思っていた。否、思う事もすらもなかった。

 朽木ルキアが拘束されたという伝令が来ても「なんとも急な話ですね」なんて人ごとのように話しながら、もう残り少ない安逸の日々を貪る。いつもと同じ、穏やかな執務室。正面の椅子に座って回覧を眺める東仙。我が物顔でソファに腰掛けて、擦りたての瀞霊廷通信のチェックをする檜佐木。
 

「現世駐在任務中に、人間にその力を譲渡したとか」

 篁は、檜佐木の机に湯飲みを差し出しながら言った。淹れたての緑茶は呑気に湯気を立てている。檜佐木は篁の方には目もくれずに通信の頁を捲る。

「東仙隊長は、何かご存知ですか?」

 篁は、檜佐木にしたのと同じように東仙の机にも湯飲みを置いた。東仙は篁の問いには何も答えずに湯飲みに手を伸ばし、一口啜る。そうして一息ついて「ありがとう、丁度喉が乾いていたんだ」とだけ言った。その言葉を聞いた篁は満足そうに微笑む。

「ま、俺らは俺らの仕事をするだけだからな」

 独り言のように、檜佐木が呟く。


 それとほぼ同時に、中庭から猫の鳴き声が聞こえた。みゃあみゃあと、一生懸命誰かを呼んでいる。篁が戸を開けて見れば、既に中庭に出ていた一人の隊士がすぐに薄汚れたキジトラの子猫を抱えて戻ってきた。かわいいですねぇ。迷子かな。他の隊士たちも、その鳴き声に釣られて集まってくる。やっとの思いで稿を脱した給料日だったし、定時まであと数十分という時間帯だ。これからの気保養に向けて皆心を躍らせている。
 
 子猫は隊士たちに四方八方からこねくり回されながらも、嬉しそうに喉を鳴らし続けていた。
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