聞き分けのいい愛を頂戴

 そのことに気づき、飴と鞭の飴の部分を与えていないことに気づき、慌てて歯を外して初めに歯を立てた部分から舌を使い舐めていく。
 そこにはくっきりと歯型の形に凹凸ができていて歯の形に並んだ鬱血痕に痛々しさを感じる。それを慰めるつもりで丁寧に舌で舐め始めると、ヤツがホッと息を吐いたのが分かった。
「ん、はあっ……は、あっ、き、気持ちイイッ……! は、はあっはあっはあっ、は、じめ、さ……ん、き、気持ちいっ、い、イイッ、イイ、です、イイッ……!!」
 そう言うなり、何故か背中に爪を立てられガリガリと引っ掻かれてしまう。なんだ、痛くて噛んだわけじゃねえのか? そっか、気持ちが良すぎてもヤツには快感が過ぎるのか。感度良好なヤツの性ってヤツかね、これも。でも、それもかわいい。
 夢中になって舐めていると、ヤツの手が背中から離れて後頭部へ当てられ、ゆっくりと撫でられるその感触が気持ちよく、ついまた噛んでしまうとその手がビグッと動き、今度は首へ手が移動しそこで爪を立てられる。
 ふとそこで、俺たちは一体なにをやってるんだと突然我に返った。こいつをこんなに痛めつけて、俺は一体、なにを……。
 暫し呆然として首から顔を上げてヤツの顔を見ると、そこには眼にたくさんの涙を溜めて、口を半開きにして眉を切なげに寄せたヤツと出会った。
「はあっ……はじめ、さん……」
「龍宝……オマエ」
 ふるふると首を横に振ったヤツが、まるでしな垂れかかるようにして首に手を引っ掛けて抱きついてくる。その身体を抱き留めてきつく抱くと、はあっと甘い息をヤツが吐いた。
「あなたの、何もかもが好き……強く噛まれた時の痛みも、甘く舐められる舌の動きも体温も、においも、湿度も何もかもが好き。大好き……もう、離さないでくださいね。そして、俺も離れません。というより、離れられない。こんなことされたら、離れるなんて無理。俺をここまで堕としたその罰は、重いですよ?」
 軽い調子で言われたが、これはヤツの本音だろう。声色は優しいが、内容が優しくない。だが、その独占欲丸出しの言葉を放たれたことで、なんだろうな、漸く本気の覚悟ができたというか。
 不思議な感覚だが、もう離さないでいいんだという安堵とも呼べる感情が湧き上がってくる。ヤツがこれほどまでに覚悟しているんだったら、俺にもそういったものが必要だ。
 それには、ヤツの身体が要る。身体で確かめたい。俺はオスだからな。自分のモンをハッキリ自分のモンにしてから、安心するなら安心したい。
 ヤツの腰を両手で抱え込み、ずいっと顔を寄せると濡れた黒目がゆらゆらと揺れて俺を映している。
「……抱くぞ。いいな。本気で、お前を俺のモンにする。文句はないな」
「あの、今までは本気じゃなかったってことですか? じゃあ、なにを考えて俺を抱いてたんです」
 どうやら、ヤツは少し怒っているようだ。腰から手を外し、頭をさらさらと宥めるように撫でてやる。
「ずっと、お前のこと考えてる。ずっと、ずーっとな。それが、さらに強い想いに変わるだけだ。おめーこそ、覚悟はあるのか。完全に俺のモンになる覚悟、あんのか」
「覚悟なんて、とっくの昔についてます。覚悟が無かったのはあなたの方じゃないんですか」
 その一言で、まるで俺たちは弾かれるようにして抱き合いそして、思いっ切り唇をヤツの唇に押し付け、力任せにぐりぐりと捻じ込むように奪うと、ヤツも同じように唇を押し付けてくる。
 すると今度は吸い合いになり、啄むなんて生温いモンじゃなくまるで唇を食べるみたいにして歯を使わずに、ひたすらに唇を吸いたくる。
 甘い味が口のナカいっぱいに拡がって、それがまた呼び水のようになり、ちゅばちゅばと音を立てさせながらひたすらにヤツの唇を貪る。
 そうしているうち、いつのまにか舌の絡め合いにまで発展し、ヤツも覚束ない舌使いで俺の舌を絡め取ってきて、逆にヤツの舌を丸めるようにして吸いながら絡め、甘いヨダレを吸いたいだけ吸う。
 まるで互いの何かを奪い合うようなキスだと思った。俺のナカの何か、そしてヤツのナカの何かを唇から吸い取り、自分のモノにするかのようなキスだとでも言えばいいのか、とにかく何かが欲しくて仕方が無く、俺はひたすらにヤツの口のナカに舌を入れ、上顎も舐めれば口の横も舐めた。さらに、舌の下にまで舌を入れ込んでヨダレを啜り飲むと、ヤツも同じように拙い舌使いで俺の口のナカに舌を入れてくる。
 それを誘導する形でヤツの舌を軽く噛み、口のナカへと案内してやるとぺろぺろと俺の舌ばかりを舐めてきて、その初心さ加減にも欲情する。
 ヤツの何もかもが、俺を誘ってくるようだ。実際、誘われているのだろうがそれにしては誘惑がすごいというか、溢れるフェロモンがとにかく俺の中の男を煽ってくる。
 その誘いに乗るつもりでヤツの身体をベッドへと押し倒し、首元へ顔を埋め、先ほど噛んだ痕がある鬱血痕をべろべろと舌を出して舐めると、ヤツの身体がぶるっと震えた。
「あ、あ、あはっ……! は、あっ、あ、あんんっ! んあっ、はあっ、は、じめ、さ、好きっ、ああっああっ、好きぃっ!」
「龍宝っ……!!」
 ちゅっちゅと所々にキスを落としながら両手でヤツの平たい胸を揉む。揉むっていっても膨らんでいるわけじゃねえから、撫でるだけだがヤツはそれでも身体を震わせ、両目を瞑って口を半開きにしつつ、いやらしく身体を捩っている。

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