絡んで噛んで吐き出した

 まるで喉仏を潰すかの勢いで強くぐっと歯を首に食い込ませると、またヤツが声を出し背中に立てられた爪が食い込んだ。
「ぐっ、うっううっ……あ、うっ! ううっ! は、じめ、さっ……!」
 痛いか、痛いだろうな。でも、痛いだけじゃないだろ、お前の場合。気持ちイイんだろ、分かってるぜ、俺には。
 手を両肩に置くと、肌がかなりしっとりと潤っているのが分かる。まるで手に吸いついてくるみてえな肌触りだ。汗、かいてんな。痛くて汗ばんだか、快感でそうなったのか。ま、両方だろうが手が気持ちよくてたまらねえ。
 そのままするっと手を下に持っていって、噛みながら脇腹をそういった意味で撫でると、さらに肌がしっとりとして、濃くて甘いにおいが鼻をつく。
 たまらねえ身体だ。上物でもその上をいく、いい身体してる。噛みついている所為でヨダレが上手く呑み込めず、口の端から零れ出たヨダレはヤツののどに落ち、それが流れていく様を興奮を交えながら眺め、さらにあごの力を強くする。
 これは、完璧にしっかりと痕が残るだろう。俺の残した、ヤツを想ってつけた傷痕。たったそれだけでも、満足が手に入る。その間、ヤツは見るたびに俺を思い出す。俺にこうされて感じたことを思い出しては、身体を熱くするんだろう。
 なんて贅沢な傷痕の残し方だろうか。こんなにも官能的な気分になるのも、ヤツとこういう仲になって初めて知った。
 今まで抱いてきた誰にも抱かなかった感情を、ヤツが揺さぶり起こしやがった。その責任は、しっかり取ってもらわねえと割に合わねえ。
 俺をここまで堕とした罪と一緒に、しっかりとその身体に焼き付けてやる。お前を想う気持ちごと、受け取ってもらおうじゃねえか。なあ、龍宝。
 いたずらに、脇腹を擦っていた手を下腹へと移動させ、へその窪みに指を挿れてみると途端だった。
「うぐぅっ……!! あ、あ、あっあっ!!」
 そう言って、苦しそうだったヤツが急に甘い声を上げ始め、途端ヤツに纏っていた空気が苦悶から快感に変わるのが分かった。
 相変わらず、へそが弱い。
 喉仏に噛みつくのを止めないまま、へそへの愛撫も混ぜてやるとまるでたまらないといった具合に、身体を妖艶にくねらせ、捩り始めた。
 まったく、たまんねえな。イイ身体だ。即反応が返ってくるのは感度良好な証拠って辺りか。
 一旦のどから歯を離してやると、途端にぜいぜいと荒く息をしながら俺を潤んだ上目遣いで見てくる。その眼には確かな欲情の色があり、半開きの口からは引っ切り無しに甘い息が漏れている。
 どうやら、相当苦しかったらしい。
「は、はあっ……は、はじめ、さん……ん、もっと。もっとがいい。首だけじゃなくて、いろんなとこ、もっと」
 欲深い野郎だ。だが、そういうところも含め、やっぱり煽られてしまう。またさらに、惹きつけられる。
 今度は首の付け根に齧りついてやると、またしても背中に腕が回って爪が皮膚に刺さる。
 ここでもやっぱり、痛み分けってことかい。自分の痛みもろとも共有したいって気持ちは分からないでもない。寧ろ、共感できる。
 初めは緩く噛んでやり、だんだんと力を籠めていくのがどうやら一番、ヤツが興奮する加減らしい。これも、噛み続けているうちに分かってきたこと。噛み方にも、どうやら好みがあるようだ。
 こういったこともすべて、ヤツを通してこういった愛撫もあることを知った。痛さと快感が同居する愛撫というものを好む人間がいることは知っていたが、いざそういう人間を相手にするともうその沼からは出られない。
 そういった意味では、俺にはSっ気があるからなのかもしれない。だからこそ、こんなにも燃えるのかも。
 付け根を噛む力を徐々に強めていくと、ヤツの身体がだんだんと強張ってそして汗ばんでいくのが感じられる。甘いかおりがまたさらに強くなった。興奮すると、ヤツは甘くなる。においも甘ければ肌すらも、甘くなるのだ。極上の身体、とはこういうのを言うのだと思う。
 そのままあごの力を強めると、微かな声で喘ぎ始め、背に刺さった爪がさらに皮膚に食い込む。
「あ、あは、あは、はあっあっ……い、痛っ……んっんあっ、あっはあっ」
 背に感じる痛みを意識しながら、さらに強く噛んでやるとギグッと身体が強張る。さすがにやり過ぎたかと思ったが、聞こえてきたのは明らかな喘ぎ声だった。そして、行き場のない気持ちをまるでぶつけるように背中に爪が刺さってきて、ぢりぢりっとした痛みが背に走る。
「ううっ、うあっ……あああっ、んっはあっ、は、は、はあっ、はじめ、はじめさ、もっと、もっとぉ、もっとがいい……噛んで、強く」
 情熱的なリクエストに応え、ますますあごに力を籠めて皮膚を噛んでやると犬歯がかなり食い込んでいるのが分かり、これ以上噛んだら肌が破れるくらいまで齧りついてやると漸く、満足がいったのか、背中に立てていた爪が外され頭を撫でてくる。
 俺のあごの方が痛ぇよ! その言葉を飲み込み、歯を外して見てみると噛みついた歯の形そのままの鬱血痕が痛々しく肌を彩っていて、舌を置いて舐めると途端、甘い味が舌の上いっぱいに拡がる。
 その甘さをもっと感じたくてさらに丁寧に噛み痕を舐めると、ヤツの身体がぶるっと震えた。どうやら、感じてしまったらしい。

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