思い出に埋まるまで

 そのまま貪るように腰を動かし、とうとう最後の一撃を繰り出した。
「っく、俺もイクぞ!! 中出しすっからな! いいよな中出しっ!! ああああクッソ、イック、イクイクイクイクッ!! ああああイックううううっ!!」
「出してっ、出してナカに出して!! ナカ、出ししてええええええっああああああー!!」
 とうとう、ヤツのナカにザーメンを吐いてしまい、狭い肉のナカで俺の吐き出したエロ汁が拡がっているのが分かる。びゅっびゅって、すごい勢いで飛んでる。
「はあっはあっ、やっあっ!! ナカ、ナカすごい、熱いのが拡がってるよおおおっ! ああああ、気持ちいっ、気持ちいっ!! 中出し気持ちイイッ!! あああああああー……!!」
 ビッグンビッグンとヤツの身体が跳ね、俺も腰を震わせながらイキを愉しみ、どさっとヤツを潰さないように覆いかぶさり、息も整わないうちから唇を塞いでしまい、互いにぜいぜいと荒く呼吸を繰り返しながら舌を絡め、ヨダレを啜り合う。
「んは、んは、んはあああああっ。はあっはあっはあっはあっ、は、は、はじめ、さ……好き、大好き……好き、です、好き……」
 唇を合わせながら、上目遣いでそう告白され、つい笑ってしまう。
「なんで、笑うんですかっ……あ、はあっはあっ」
「は、ははは、いや、はああっ……お前があんまりにもかわいいからさ。つい、な。機嫌損ねんなよ」
 ちゅっと額にキスしてやると、ゆるっとヤツの表情が緩みそれは次第に歪んで、眼がだんだんと潤んでくる。
 そしてとうとう、涙が溢れ出しヤツは喜んでいるような、悲しんでいるような訳の分からない表情で泣き始めた。
「お、おいっ、どうした? なんで泣くんだよ」
 しかし、ヤツは首を横に振るばかりでなにも言ってくれない。ただただひたすらに泣きじゃくっている。
 何とか涙を止めたくて、真っ赤なほっぺたを両手で包み込んで親指の腹で涙を払ってやるがそれだけじゃ追いつかないほどに、次から次へと涙が溢れてくる。
 なんだ、なんなんだ。この涙はなんだ?
 すると、ヤツは泣き声を上げながらこんなことを言ってきた。必死にしゃっくり上げながらのそれに、動揺が隠せない。
「おれっ、おれやっぱ、だめだっ。あなたを独り占めなんて、できないっ……! できませんっ!! 例え今が幸せでも、でもだめだと思うんです。彼女のところへ、返してあげないとっ……。こんな愛してもらった後に言うことじゃないけどでもっ、でもっ……!!」
「なんでそうなるんだっ!! てめーはさっき何を想って俺に抱かれてた!! なにを、言ってんだっ……!!」
 言葉が出ない。なんでいきなり、そうなるんだ。俺が撫子のところへ帰る? そりゃ、帰るさ。でも、お前んところにだって帰りてえよ!! 帰るよ!!
 その一言が出てこない。
 なんでこんな悲しいことを、今こいつは言うんだ。さっきまでだって、愉しかったじゃねえか。あんなに、愛し合ったのに。なんで……。
「さあ、俺を置いて、このまま置いて帰ってください、彼女のところへ。きっと、帰りを待ってます。あなたが帰ってくるのを、待ってるはず。だから、行ってっ……! 行ってくださいっ……!!」
 ヤツは両目を瞑っていて、上目遣いでもう俺を見てくれなかった。そのことが、ものすごく悲しい。
「行って!!」
 そう言うなり、いきなり思い切り突き飛ばされてしまって、ベッド下に落っこちてしまい、思わず目線を上げると、ヤツの泣き顔が見えた。
 無理して泣きながら笑ってるもんだから、ひどく歪んでる。かわいい顔が台無しだ。
「さあ、行って。振り向かないで行ってください。あなたには、帰る場所がある。思いっ切り愛してもらえて、それがなんとなく分かりました。幸せの独り占めはよくない。あなたにはもっと、愛するべき人がいる……それは、俺じゃない。俺じゃ、ないぃっ……!! 行って、行ってください!! 見ないで行って!!」
 とうとう、ベッドの上でヤツは泣き崩れてしまい、ひくひく肩を上下させて泣きじゃくっている。その姿をしばらく見ていて、一つ決めたことができた。
 徐に立ち上がり、そのままベッドに戻ってぐしゃぐしゃになって泣きまくっているヤツの身体を力を籠めてぎゅっと抱きしめた。
「やっ!! 止めてください離してっ!! 俺に、触らないでっ!!」
「……龍宝、聞け。なあ、俺はお前を幸せにはできねえのか。俺じゃ、だめってことか。そんなに役不足か、俺は」
「えっ……なに、突然、なにを……」
「俺は、お前が好きだ。この感情に偽りはねえ。だったら、傍に居てお前の涙を止めたい。大体、俺が戻ってきたのだってお前が泣いてるだろうと思って帰って来たんだからな。なあ、泣くなよ。泣くなって。ほら……」
 いやがるヤツだったが、無理やりほっぺたを両手で包み込むと涙でぐしゃぐしゃになったヤツの泣き顔が悲し気に歪んでいる。その鼻の頭にキスし、額に唇を移してもう一度キスし、両眼の瞼にもキスを落とすときょとんとした表情になった。
「さい、と、さん……? なに……? なんで、こんなこと」
 またじわじわと眼に涙が盛ってくる。目線をしっかり合わせ、今度は唇にキスしてから頭を掻き抱いた。

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