刹那の記憶の行方

 誘われるがまま、舌を口のナカへと入れ込むと途端に舌が熱くなり、甘い味が強くなる。その甘味を味わうように舌を大きく舐めると、こぽっと生温くてぬるついてて、そしてとてつもなく甘い液体が口のナカへと流れ込んでくる。
 ははあ、これはクセだな。言ってたもんな、鳴戸にキスする時はヨダレ溜めとけって言われたって、これはその時のクセが抜けてねえんだ。それほどまでにキスしてんのかよ。妬けるぜ。
 だが、このヨダレはいただいておく。だって、すげえ美味いんだもん。もらって何が悪い。こいつのすべては俺のモンだ。
 鳴戸のモンじゃねえ、俺の龍宝だ。
 口のナカで捏ね回してしっかり甘い味を堪能してから、ゆっくりと少しずつのどに通して飲み込んでいく。
 すっげえ、気持ちがイイ。甘い味がふわっと鼻に抜けて、それだけじゃないヤツだけの味もして気持ちが良すぎる。
 陶酔し過ぎてぼーっとしていると、不思議に思ったのかヤツが少し唇を離し、瞑っていた目を開けてこちらを見ている。
「どうか、されました……? あの、舌の動き止まってますけど……俺は、もっとキスしたいです。斉藤さんとキスすると、とても、なんていうか幸せになれるんです。ちょっとたばこくさいけどそれも、好き」
 はにかんで言われて、ほっぺたがポッと赤くなる。なんだ、そのかわいい様は!! なんなんだ、こいつのかわいさにはホント、果てがねえぜ。
 いつまでもその笑顔を見ていたくてじっと見つめてしまうと、今度はきょとんとした表情に変わった。
「あの……? えと、俺の顔に何か付いてます? そんなに、見られるとちょっと、恥ずかしい……」
「いや、お前って……ホントかわいいな。うん、かわいいぜ。すんげえ、かわいくって、そそられる」
「えっ……」
 ずいっと顔を寄せて唇が触れ合うか触れ合わないかの位置まで近づくと、ヤツの顔が熱く火照り始め、目を伏せると長い睫毛が眼の中に影を作ってそれがまた、超絶に色っぽい。
 唇に、少しの吐息を感じる。甘い息だ。
「あ、あ、あの……キス、しないんですか? 俺は、もう、限界っ……」
 ヤツの唇と触れ合う寸前、顔を背けると頬にぷちゅっと龍宝の柔らかな唇が押し当たる。
「あっ、な、なんで避けるんですか。おれ、キスしたい……キスがいいです」
「キス、したい? そんなにしたいか。……俺も!」
 今度こそ俺からヤツの唇を奪い、甘い味のする唇をちゅっちゅと音を立てて吸いながら柔らかさと味、そして温度を堪能する。
 やっぱり、柔らかくて美味い。この旨味は一体、ホント何処から来るんだろうな。不思議でならねえぜ。
 でも、悪くねえ。全然悪くねえ。どころか、そそられて仕方ねえ。もっともっと、さらにもっと欲しくなっちまう。中毒性がある、こいつとのキスは。
 いや、キスだけじゃねえ。ヤツは身体もイイ。ついでに、顔もよければ性格も……かわいいんだよなあ。普段はいけすかねえ野郎を気取っているが、本当のこいつの顔はそうじゃねえ。甘えたで、素直で、すげえかわいいヤツだ。
 放ってなんておけねえ。時間が許すなら、ずっと構っていたい。傍に居たいって、なんか思っちまう何かがこいつにはある。
 それをきっと、世間では魅力ってんだろうな。魅力満点の龍宝が俺の腕の中にいる。幸せだ。こんな幸せ知っちまったら、もう他には行けねえよ。それくらい、こいつが愛おしい。
 そして、愛くるしいヤツの笑顔はとっておきだ。
 唇を離して至近距離でじっと見ながらゆったりと笑ってやると、つられるように大輪の花が咲くような、そんな鮮やかで色っぽく、そしてキレーな笑顔のお出ましだ。
「斉藤さん……好き、好きです。あなたが、好き……もっと、キスしたい。キスだけじゃなくて、いろいろ、たくさんのいろいろなことをあなたとしたい。離れていた分を、取り戻したい……淋しかったです、とても。あなたと離れている時間は、孤独でしかなった。だから……欲張りと思われてもいい。俺を、抱いてくれません……?」
 もうたまらねえ。くっちゃくちゃにしてやる。なにも言葉が出ねえくらい、愛してやりてえ。身体も、心も、なにもかもを俺のすべてで愛し尽くしてやりたい。
 こうやって思うのも、こんなに強い感情を持つのもって言った方がいいか、こいつが初めてだ。
「部屋……行くか。思いっ切り、かわいがってやるよ。何もかも、お前の望み通りにしてやる。俺のすべて、受け止めろ、その身体で」
 すると、さあっと顔に赤色が拡がり唇が戦慄く。そして、静かにのどが鳴ったのが分かった。
 暗黙の了解で立ち上がり、恋人繋ぎで手を繋いで、階段は狭くて一人しか通れないのでヤツが先導する形で階段を上っていく。
 熱い手だ。俺の手よりだいぶ小さくてかわいい。少し汗かいてるか。この手も、しっくり馴染んでくる。俺が求めていたヤツの手。拳銃を持つ割には、スマートな手だ。爪の形がきれいなのも気に入ってる。
 真っ白で柔い手に拳銃は似合わないと思うが、こいつにかかるとそれも美点になっちまうから大したモンだと思う。
 何もかもが上等で、極上の人間ってのはこの世にいるんだな。それも、こいつを通して知った。今から、そいつとセックス。身体が疼いて仕方ねえ。
 さっき一回、こいつの顔にブチ撒けたっつーのに、俺のチンポは既に半勃ちを通り過ぎて完全に勃っちまってる。ヤツのナカに入りたいって、チンポが言ってる。この暴れ馬を使うのは、ヤツを散々かわいがった後だ。
 何も分からないくらいメロメロにして、それからこいつを使う。愉しみでならねえ。

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