優しく幸福な悪魔

 思わず溜息のような吐息が漏れる。と共に、切なげな声が口から零れてしまう。
「んっ……はあっ、は……おやぶん……」
 するとそのついた吐息ごと掬われる勢いで、またしても口づけられてしまい舌に乗った唾液が吸い取られてゆく。龍宝も負けじと鳴戸の舌を舐めると、今度こそ濃いアルコールの味がしてふと、疑問に思ってしまったことを口に出してしまった。
「親分、酔っているんですか……?」
 それに対し、ぴしゃりと返答が叩きつけられる。
「酔ってねえ」
 まるで尋ねたことを叱るようにきつく、首元の付け根に噛みつかれ思わず身体が反応してしまい「んっ!」と小さく啼いてしまう。
 酔っていないなら、当たり前にシラフということだ。そうだとしたら、相手が龍宝だと知ってこうして愛撫を施していることになる。
 鳴戸は乱暴に龍宝の両胸を女の胸のように揉みしだき、身体の中央で息づく龍宝自身にも手を掛けて激しく亀頭を掴むように撫で回してくる。
 突然のその豹変と快感に、つい啼いてしまう龍宝だ。
「んあっ! ああっ、そんな、親分っ、そんなことっ……!」
「だったら、これはどうだ?」
 鳴戸は完全にベッドに乗り上げてきて、龍宝の身体に覆いかぶさるようにしながら腰をがっしりと抱えられてしまう。その上で、乳輪と共に乳首が鳴戸の口の中へと消える。
 その生温かくも湿った感触に背を震わせていると、コリコリと痛くない程度に乳首が齧られ、ついまたしても啼いてしまう。
「あああっうっ、んっんっ、んっううっ!」
 両乳首ともむしゃぶられ、普段感じることのない快感に身を任せ啼いているとぐいっと身体を伸び上がらせた鳴戸に頭を抱え込まれ、まるでしゃぶりつくようにして唇を塞がれてしまい、強引に咥内に舌が入り込む。
 ナカをべろべろに舐められ、息を乱していると今度は首元に顔が突っ込まれそこを何度も何度も舌で舐め、柔く噛まれるのに元々興奮していた気持ちがさらに昂るのを感じ、思わず広い背に腕を回してしまう。
「おや、おや、おやぶんっ! ああっ、んん、んっんっんっんっ、き、気持ちいっ……!」
 思わず身を捩ると、今度はぎゅっと身体をきつく抱かれきゅっと両乳首を抓り上げられる。じんっとした快感が身体中に走り、自身のペニスからカウパー液がじゅわっと滲み出したのが分かった。だがそれは分かっただけに終わり、そのまま鳴戸に身体を任せていると突然だった。
 身体を立てた鳴戸によって両足が割り開かれ、なにもかもが露わになるその体勢に思わず羞恥に顔を染めると、ペニスを避けながら素足に舌をめちゃくちゃに這わせ始めたのだ。
 その息遣いは荒く、何処か怖くなってくるような迫力さえあり龍宝はただただ、啼くだけだ。
「ま、待って、待ってください! そんな、止してください親分がそんなとこ、舐めるなんてっ……! いけません、だめです!」
「だめって、誰が決めたんだ? なにもだめなこたねえだろ。ココ、こんなにしやがってだめもクソもねえ」
「やっ……! おやぶ、親分待って、くださいっ……あああ!」
 今度はへそにしゃぶりつかれ、舌を使って抉るように窪みを責めてくる。普段は絶対に感じないところが、何故かとてつもなく感じてしまう。
「あっ、やっ……おやぶん! 親分そんな、そんなとこっ! だめ、止めてください! き、汚いっ、汚いです、やっ!」
「汚くなんかねえぞ。オマエの肌、美味いな。甘い味がしやがる。ひどく甘い」
 舌は胃の辺りから下腹まで及び、味わうようひたすらに這い回り龍宝をたまらない気持ちにさせる。
 もはやこの時点で既にイってしまいたい。達してしまいたいという欲望に支配されつつあるが、ここでザーメンを吐いてしまうのはいくら何でも早すぎるだろうし、未だ色事に興じたいという気持ちでなんとかやって来る射精感を封じ込め、鳴戸の愛撫に溺れる。
 はっ……と息を吐いた時だった。急に鳴戸が身体を伸び上がらせてきて、あっという間も無く唇を塞がれたと思ったら片手で頭を抱えられ、もう片手はペニスに伸び扱きながらめちゃくちゃなキスをされる。
 かなり性急な愛撫だ。それだけ興奮しているということなのか、これが鳴戸の本来の抱き方なのか分かりかねたが、とにかく分かることは龍宝もたまらなく興奮しているということだ。
 ペニスを扱く手は亀頭を中心にサオをごしごしと力強く上下に擦ってきて、ぎゅぎゅっと握られるたび、びゅっびゅっとカウパー液が腹に飛ぶのが分かる。
 そのうちにくちゃくちゃと扱かれるたびに粘着質な音が立ち、自身が濡れそぼって鳴戸の手を汚しているのが分かりながら、さらなる刺激を求め身をくねらせ強請る。
「もっと、親分もっと! はああっ、んっ、もっとが、いいですっ……あぁっ……!」
「やらしいな、お前ってヤローは」
 ペニスから手が離れ、思わず「あぁ……」と残念めいた吐息をついてしまうと、ガシッと頭を鷲掴まれ、噛みつく勢いで唇を塞がれてしまい、レロレロと鳴戸の舌が動き龍宝の舌を外へと引きずり出し、龍宝も絡みつけるようにして舌を動かすと唾液が次から次へと溢れ出てくる。
 それを、鳴戸の舌が丁寧に舐め取りまた口づけてくる。その激しさに、すっかり翻弄されてしまう龍宝だ。
 唇が離れてゆくと、つい上目遣いで鳴戸を見てしまう。
「はあっ……は、は、おやぶん……」
「準備は、できてんのか」
「……準備? 準備って、その」
「後ろの準備はできてんのかって聞いてんだよ。できてねえなら、俺がすることになるけどな」
 そこで、顔を真っ赤に染めてしまった。洗うだけではだめだったのだ。なにか滑りの良くなるもの、例えばクリームみたいなものでもアナルに塗っておけば手間はなかったはず。完全に手落ちだ。
 龍宝は目を伏せながら鳴戸の両腕を掴んだ。
「すみません……準備、未だです。いえ、いいです。そのまま……挿れてください。俺は構いません」
 すると、鳴戸は真面目な表情を崩しぎゅっと身体を抱いてくれ額に一つ、口づけが落とされる。
「ばっかだな。んな無茶なんてしねーよ。そうだな、だったらあれだ。アメニティとかでなんかねえかな。ちょっくら取ってくるわ」
 軽い調子でベッドから出て行った鳴戸のペニスはしっかりと勃起しており、きつそうにスラックスを持ち上げていた。
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