靴底に湖を飼っている

 アナルから指を引き抜き、気怠い身体を起こして一旦、シャワーを浴びて身体の汚れを落とした後、ローションのボトルを手に先ほどイっても未だ勃起しているペニスを揺らしながら浴室から出て、新しいバスタオルでぞんざいに身体の水分を拭き取ってから、全裸でバスルームを出てテーブルの上に置きっぱなしになっているバイブを手に、ふらふらと身体を揺らしながらベッドへと入り、掛け布団を退けて寝転がる。
 確か、店の男によると正常位で挿れるのが一番気持ちイイとのこと。
 ここはあの男を信じ、やってみるしかない。
 ごろんとベッドに寝転び、シーツが身体に当たるだけでも既に気持ちイイ。ローションを取り出し、手に零し落としてその指をアナルへと押し当て、もう解れてはいるのでそのままアナルへとローションをたっぷりと塗りつけ、中指を挿れてみる。
 確かに、完全に解れており、これならすぐにバイブを挿れることも可能だ。
 ドキドキと高鳴る心臓を胸に、バイブを取り出して仰向けで足を折り曲げて開き先端をアナルへと押し当てる。
 これで、本当に何もかもの解決になるのだろうか。卑猥なおもちゃを、アナルに挿れてイクことで変わるものがあるのか。
 震える手で、ぐぐっとバイブを押してゆくと、太さにまず驚き次いでやってきたのは快感で、太いモノが挿れられたという満足感がさらに快感を強くし、先ほどのアナル解しの甲斐もあってか、ずぶずぶとバイブが抵抗なく埋まってゆく。
「ああっああっ……あっあっあっあっあっ、き、気持ちいっ……!! うっうっ、ああああああ!!」
 ナカへと押し挿れるたび、たまらない快感が胎内から湧き上がってきて、夢中になってアナルから感じる快楽を受け止めつつ、限界まで挿れると待っているのは極楽だった。
 先端がGスポットに押し当たり、たったそれだけでもうイってしまいそうに気持ちがイイ。
「あ、あうっ、あうっ、あうっ!! ああっああああ気持ちイイッ……!! う、うああっ!! はあっはあっはあっはあっはあっ、はっはっはっ」
 もはや今すぐにでもイけるまでペニスは勃起し、先端からカウパー液を垂らして腹と糸を引いて流れ出ている。
 その卑猥な画にも興奮してしまい、ついにバイブのスイッチをオンにしようと手を伸ばしたところだった。
 スイッチに指を置いた時点で、ふと物音が聞こえたような気がして耳を澄ませてみる。まさか、浴室での喘ぎ声で隣からのうるさいとでもいった文句だろうか。
 そのまま黙っていると、今度こそ明確に自身を呼ぶ声が聞こえた。
「龍宝? いるんだろ、車もバイクも置いてあるからな。俺だ、鳴戸。なあ、開けてくれよ。仲直りしにきたんだって。それに、いい加減にして組にも出て来いよ。お前にしかできないこともあるしよ。なあって」
 あの声は、鳴戸だ。
 一気に身体に冷や汗がぶわっと噴き出て、さあっと身体から体温が引いていく感覚がする。こんな場面を見られでもすれば、一体どうなるか。
 だが、居留守を決め込めばそのうち諦めて帰るだろう。鍵はしっかりとかかっているし、問題はない。
 そう思いながらナカでGスポットに当たっているバイブを感じながら、半分その快感に酔いつつ、鳴戸が帰るのを待っていたがこれまたしつこい。
 何分経っても帰ることをせず、いつまででも声をかけ続けてくる。
「なあ、なあ龍宝って。俺がさあ、悪かったから。んなへそ曲げんなよ。お前の言いたいことも分かるけど、俺の言いたいことだって聞いてくれてもいいんじゃねえ? どうせお前、泣いてんだろ、独りで。想像できる。だから、なあ、開けてくれって」
「う、う、はあっはあっ……はっはあっ、き、気持ちいっ……! あぁっ……!!」
 どうにもナカにバイブが入っているというだけで、気が漫ろになる。あまりにも気持ちがイイ、この太いおもちゃが龍宝から理性を奪ってゆく。
 だがしかし、状況は一変する。
 というのも、鳴戸が妙なことを言い出したのだ。
「あー、もういい。そっか、そんなに俺の顔見たくねえってか。だったら、強引に見てやろうじゃないの。よっしゃ、合鍵作っといてよかったぜ」
 そして、かちゃかちゃと鍵を開ける音が聞こえる。
「ほーら! 開いた!! 龍宝ー、どこだ?」
 まさか、玄関扉をいつの間に作ったのか合鍵で突破してくるとは。焦ってバイブを取り出そうとするが、しっかりとハマってしまっていて抜くことも容易ではない。
 しかし、何とかしなければならない。とにかく横を向いて掛け布団をサッと被ると、鳴戸が寝室へやって来るのが分かった。
「ははあ、ベッドの中に隠れていやがるのか。龍宝、仲直りだ。いい加減お前の顔、見てえよ俺は」
 ぐっと掛け布団を握ると、その力を上回るほどの勢いで掛け布団が捲られてしまい、そこで露わになる姿に、鳴戸は絶句した様子で黙り込んでしまう。
 龍宝は鳴戸に背を向ける形で横たわっているが、そんなことをすればアナルに何かが挿入されていることが余計に浮き彫りになるだけだ。
 そのあまりの羞恥に涙がぶわっと湧き出てきて、しゃっくり上げながら枕に顔を押し付け、嗚咽を漏らし始める。
「オマエ……なにやってんの……? なに挿れてんだよ、ソレ」
 その言葉に、龍宝は自分の意識が怒りに塗りつぶされてゆくのを感じ、無理やりアナルからバイブを抜き出して鳴戸の方へと投げつける。
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