ざらざらの心臓に触れる手つき
照れを誤魔化すようにコーヒーを一気飲みし、指で頬を掻いて鳴戸のあの、明るい笑顔を思い出す。「それは、俺には勿体無いくらいカッコよくて、優しくて……笑顔が素敵で、すごくなんていうか、ユーモアもある人で、いつも思う。俺には勿体無いなと。だから、あの人が何処かへ行ってしまっても仕方がないとも思う」
「それはあなたの本心じゃないわよね。何処にも行って欲しくないなら、繋ぎ止めなくっちゃ。彼だって、あなたのこと好きじゃない。ちゃんと分かってるわよ」
「そう、かな……分からない。あんまりそういうこと、言ってくれる人じゃないし……言わないし」
「大丈夫よ。きっと、大丈夫。アタシの大丈夫は当てになるわよ。お客さんも言ってくれるわ。アタシの大丈夫は大丈夫だったって。素直になってみたらいいのよ。そしたら、開けてくる道もあるわ。ま、月並みな言葉だけど大切なことよ。すごく、大切」
それから、龍宝は男に礼を言って店を後にした。その際、ちゃんと言い残しておいた言葉がある。
「なにかヤー公絡みで困ったことがあったら鳴戸組の名前を出せ。アンタの名前……」
「坂井よ。坂井っていうの。あなたまさか……」
「坂井だな。その名を出して鳴戸組に連絡くれれば、すぐに俺を通すようにしておく。……いろいろ、ありがとう。本当に助かった。あと、菓子もありがとうな。美味かった。感謝してる。……じゃな」
「ええ、何かあったらまた来てね。遊びに来る感覚でいいから。商品買わなくても、来ていいからね。その後の顛末、聞かせて」
「ああ、ありがとう。時間があったら寄らせてもらう」
そう言って店から出ると、結構長い時間店内に居たらしい。陽が少し翳り始めている。
家に帰ってすぐに、媚薬を飲んで準備を始めなければならない。この性欲をどうにかして治めないことには、鳴戸の顔もロクに見れやしない。
購入した商品を手に、龍宝は些か楽になった気分を抱えてパーキングエリアに向かうのだった。
そして、自宅に到着するなり早速、袋の中から媚薬を取り出して用量を確認してミネラルウォーターを用意する。
少し怖いが、とてもではないが頭が飛ばない限り、あのバイブをアナルへ挿れることはできそうにない。だったら、自分で飛ばすしかない。
意を決してクスリを口に放り入れ、そして飲み下す。すると舌に微かな苦みが残り、水で漱ぐようにして大量にミネラルウォーターを飲み、そのままその足でローションを持ってバスルームへと向かう。
そのうちに、クスリが効いてくるだろう。その時は。
その前に準備だ。バスルームへ向かう足を止め、不織布の袋からバイブを取り出し、電池を取り出してセットし、一応動作確認をしてみる。すると、スイッチは挿入口から見て後ろにあり、スイッチをオンにしてみるといやらしい動きでグイングインとスイングを始め、あまりの卑猥さにすぐにスイッチを切り、テーブルの上へと置く。
これを、胎内に挿れる。何たる背徳的な行為だろうか。けれど、買ってしまったものは使わねばならない。それに、これを挿れればこの身に凭れかかってくる性欲からはおさらばできるはずだ。
そう信じて、まずはもう一度バスルームへと足を進め、浴室へと入りシャワーを浴びつつ外出でかいた汗を頭からシャワーを浴びて洗い流し、気持ちが良かったのでそのまま暫くシャワーを楽しみ、シャンプーを手に取って頭に乗せてかしかしと擦る。いいにおいが鼻に掠り、泡を流して次はボディーソープをスポンジに取り、身体に滑らす。
やはり外出後のシャワーは気持ちがイイ。
丁寧に泡を流した後、意を決してシャワーノズルを手に持ち、外してそれを肛門に押し当てる。するとひどく気色の悪い感触が襲いかかってきて、歯を食いしばりながらナカを洗う。
言われた通り、回数を少なくしてナカを洗い続けるとそのうちに、何か心というか身体というべきか、もやもやしたものが浮かび始め、胎内から出る水もきれいになったところでハッキリと、そのもやもやの正体が何なのか分かった。
というのも、勝手にペニスが反応を始めたのだ。
媚薬が効いてきた。
息が知らず上がってしまい、足に力が入らなくなり、そのままその場に座り込む。思わずペニスに手が伸び、きゅっと握るとビリッと背筋を駆け抜けるような快感がペニスから送り込まれ、あまりの衝撃にその場にへたり込んでしまい、必死になってペニスを握りしめ扱きたくる。
「ああっ!! あ、あ、あ、あっ!! ああっ、うあああ気持ちいっ、気持ちいっ!! あっくうう、うああっあああっあうううっ!! おや、おや、おやぶん、やだ、あっ! あっあっ気持ちいっ、気持ちイイッ!! や、イク、イクッ!!」
既に身体は射精体勢に入っており、随分早い絶頂だと思ったがこれが媚薬の効果なのだ。店長と思われるあの男がおススメできないと言っていたのはこのことだったのかもしれない。
何しろ、快感が強すぎる。
ただ扱いているだけでも、数人に集って擦られているような感覚までする。
口からよだれを垂らし、夢中になってぼんやりと薄目を開けながらひたすらに手淫に溺れる。
両手を使い、タマを揉んだり亀頭を親指と人差し指で潰したりすれば言葉にもできない快感が襲いかかってきて、思わず啼いてしまう。
「あああああっ!! ああっ、あああうううっ!! んんんっ、んんああああ気持ちイイッ!! あっあっ、あああああイイッ、イイッイイッイイッイイッ!! おや、おや、おやぶんイイッ!! あっあっ、い、イク、イク、イっちまうううううっ!! うっあっあああああああ!!」
本当にイってしまう。このまま扱き続ければすぐにでも絶頂に達することができる。