夜明けの赤らみさした頬

 鳴戸の髪を梳く手はいつの間にか、背中に入り込み性的な意味を含めて大きく撫でられる。
「んっ……あ、おやぶん……」
「お前、痩せたなあ。ゴール島で会った時はもう少しがっしりした身体つきだったのに、顔色も悪いし、めしを食って無きゃ当たり前か。よし、もう少し時間かけてスープ飲んだら一緒に風呂でも入るか。このホテルの湯舟、広いから二人で入れるしな。龍宝、もうちょっと食えそうか?」
 それに、こくんと頷きそっと鳴戸から離れる。
「あと、少しだけなら何とか……でも、あまりたくさん一気に胃に入れると戻しても厄介なので、本当にあと少しだけ」
「ん、じゃあ食ったら風呂だな。久しぶりにお前と入る風呂、楽しみだわ。十数年ぶりだもんなあ。お前が湯に当たるとさ、白い肌が桃色に染まってすんげえ美味そうなんだわ。あー、愉しみ」
「おやぶんっ!!」
「いいじゃねえか、俺はお前に惚れてるんだぜ。そういうトコ見るのだって当たり前だろ」
 その言葉に、顔を真っ赤に染める龍宝だ。まさか、そんなところを見ていたとは。
 鳴戸も離れてゆき、正面に座り直して残りのスープを掬って飲み始める。それに倣い、龍宝もゆっくりとスープを腹に収める。
 幸せ過ぎて、涙が出そうだ。何だか今日は泣いてばかりいる気がする。けれどきっと、涙にはいろいろな理由があって、いま流している涙は間違いなく、嬉し涙だ。
 鳴戸がいてくれて嬉しい。ものが食べられて嬉しい。今この時間が愛おしい。何よりも誰よりも、鳴戸が愛おしいと思う。
 龍宝は溢れ出る涙を拭おうともせず、ひたすらに鳴戸とスープを啜るのだった。
 結局、スープはすべて完食することはできなかったが鳴戸には盛大に褒められた。久しぶりに摂る食事でこれだけスープが飲めれば上出来だと、頭を撫でてくれ龍宝も照れながらその頭に乗る手の感触を愉しむ。
 食事とは不思議なものだ。たったスープ三皿飲んだだけでこんなに元気になれるとは。やはり、元気の素は鳴戸だろうが。
 そしてその後は、二人で湯船に湯がすでに張ってある準備万端のバスルームへと向かった。
 身に着けていたのはバスローブだけだったのでそれを脱ぐと全裸のできあがりだ。鳴戸も同じくバスローブを脱ぎ捨て、浴室への扉を開いて早速、シャワーから湯を出す。
 まずは鳴戸の身体から清めようとシャワーヘッドを持つがすぐに引っ手繰られてしまい、頭から湯が降ってきてあっという間に水浸しになる。
「お、おやぶんっ! ちょ、先に親分からっ! 俺がお背中流しますから。悪いです、止してください!」
「いいのいいの。今日の主役はお前なんだから。今日はしっかり、甘やかしてやるからな。覚悟しろ」
「そんなっ……!」
「ほら、眼ぇ瞑んな。シャンプーしてやるから」
「あ、あの、あの! 折角再会して俺が主役なんてっ……! 主役は帰ってきた親分でしょう? 悪いです、ホントに!!」
「なんだい、親分命令が聞けねえのか、お前は。いいから、そこ座って眼ぇ瞑れって。何度も言わせるんじゃないよ。はい、さっさと座る!」
 鳴戸の手によって強引にその場に座らされた龍宝は、戸惑いながら目を瞑ると頭をかしかしと上から擦られ、そのあまりの気持ちよさについ黙ってうっとりとしてしまう。
 手は丁寧に頭を擦り、頭皮のマッサージもしてくれる。後ろの長めの髪にもしっかりと手が入り、思わず頬を染めて笑んでしまう。
「気持ちイイです、おやぶん」
「ん、そうだろうよ。俺直々のシャンプーなんざ、貴重すぎるからな。でも上手いだろ? お前にしてもらったことをしてるんだけどな。お前シャンプー上手いから、してもらってる俺まで上手くなっちまった。よし、流すぞ。次は身体だ」
「え、いや、身体はいいです。自分で……」
「黙りな。身体も俺がキレイにする。文句は言わせねえぞ。さ、ちゃんと眼ぇ瞑ってるだろうな? 泡流しまーす」
 そこでも頭皮に湯が当てられ、芯から泡を丁寧に洗い流してくれ、先ほどかいた汗まみれの頭がきれいさっぱりでなんとも気持ちがイイ。
 その後も、鳴戸の手によって身体も隅々まで現れてしまい、アナルからペニスそういった陰部までもをきちっと洗い上げ、果ては足の指の股までもアメニティのボディスポンジが当たり、龍宝を大いに困惑させたが、当人の鳴戸はそれは楽しそうにボディスポンジ片手に身体を擦ってくる。
 そして最後にシャワーで泡が流されると、湯上りたまご肌の清潔な龍宝の完成だ。
「ありがとうございました。丁寧に洗っていただいて……嬉しいです」
「おう、お安い御用よ。じゃ、次は俺ー。キレーにしてくれよな」
 それに大きく頷き、目を瞑った鳴戸に一度、軽くキスしてから頭を洗いにかかる。髪を括っていた紐を解くと、結構な長さの髪が流れてきて、早速髪を濡らしてシャンプーを始める。
 鳴戸は少しの間風呂に入ってなかったのか少し、髪が脂っぽく、さらにシャンプーの液を足してきれいに頭皮からしっかりと力を入れてマッサージするように擦ると、漸く脂が抜けてきて指通りがよくなる。
 そのまま頭皮全体をマッサージし終わり、髪も丁寧にシャンプー塗れにして擦った後、シャワーの湯で洗い流す。
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