またたきの温度と解けない暗号

 それと共に、身体が燃えるほどに熱くなり、急激に自分の身体と心が鳴戸を欲しがり出し、戸惑うほどに大きく育ったその感情は行動に現れ、ぐいっと鳴戸の首を引き寄せ、腕で固定し口づけを強請る。
「おやぶん……きて、きてください。キス、して……たくさん、してください」
 そっと目を閉じると、するっと涙が目尻から伝いシーツに零れてゆくのが分かった。そのまま目を瞑り続けていると、目尻に溜まった涙が親指で拭われたのが分かり、そろりと両手で頬を包み込まれる感覚がする。
 相変わらず、熱い手だと思う。この熱さに飲まれて、何も分からなくなってしまえばいいのに。そう思わざるを得ない自分の弱さを胸に、鳴戸の唇を待っているがいつまで経っても触れることは無く、薄目を開くと歪んだ鳴戸の顔が見えた。
「どうしたんです、おやぶん……? その顔は一体……」
「悲しいことをさ、言うなよ。そんな悲しいことばっか、なんでお前は言うんだ。俺と再会できて、こういう風に二人きりの時間ができたこと、嬉しくねえのか? もう、俺は遅いのか。お前は、違うところへ行っちまったのか?」
「おやぶん……?」
「なあ、どうしちまったんだよ。何がそんなにお前を変えたんだ。この十数年間が、そんなにつらかったか。俺が、お前を放り出したからそんなになっちまったのかよ」
「ち、違う……違います、ただ……ただ、心底から、淋しかったのは本当です。独りきりで立てるほど、俺は強くない。それだけは、言っておきます。今まで頑張ってきたけど……いえ、いいです。気にしないでください。俺の戯言なんて気にしてないで、抱いてください。俺も、早く抱かれたいです。親分が早く抱きたいように」
 少し笑ってみせると、さらに鳴戸の表情は歪んでしまい、唇をぐっと噛み締めている。その身体がふわっと揺らめいたと思ったら、折り重なってくるように抱きしめられ、先ほどと同じように首元に顔が埋められ、はあっと熱い吐息が降りかかった。
「……どうやって抱けってんだい。そんなになってるお前を、どう抱けっつーんだ。俺には、もう無理なのか? お前の心にぽっかり空いた穴埋めるのに、俺じゃあ無理ってことを言いてえのか。そこまで、傷つけちまったのか、俺はお前を。大切な……何より愛おしい、お前を」
「だから、戯言です。どうせ、俺の命もあなたの命ももうすぐ尽きるんです。だったら……その時間を愛のあることに使いたいんです。だから、気にしないで抱いてください。久しぶりですから、身体が開くかどうかは分かりませんが……でも、それでも抱いて欲しい」
「龍宝……」
「抱いてください、おやぶん。俺に、親分の溢れんばかりの愛、ください」
 そう言ってさらりと括ってある髪を指の股から梳くと、大きな溜息が首筋に降りかかり、その後、柔らかな感触が何度も肩や、首、鎖骨に当たるようになる。
 その温かなものが唇だと気づいたのはすぐで、わざと晒すようにのどを曝け出すと柔く喉仏を食まれてしまい、息が詰まって苦しいがそれもまた、幸福の痛みだ。
「ん、んっ……! んん、ん、んうっ……!!」
 その甘い苦しさに、思わず鳴戸の上腕部にしがみつき、爪を立ててしまうと食まれていた歯が外され、その代わりに舌で噛まれた部分を丁寧に舐められる。
「あ、はあっ……は、は、ああっ……んっん、おや、ぶんっ」
 そのままの勢いで口づけられ、その手は龍宝の太ももを性的な意味合いを含めた手つきで撫で始め、つい身体を捩ってしまうとまるで逃がさないとでも言うようにぐいっと腰を抱え込まれ、その上で唇に吸い付いてくる。
 ちゅっちゅと唇を吸われ、そのまま耳を甘く食まれる。
「ああっ、ん……耳、気持ちい……ん、んっんン、もっと、もっとがいいです、耳……して、ください」
 すると耳全体を口のナカへと招き入れられてしまい、熱い咥内で耳をしゃぶられそのあまりの気持ちよさに甘く啼いてしまう。
「あ、あっ……ん、んん、んう、はあっ、だめ気持ちいっ、気持ちいっ、あっあっ、おやぶん、あっ」
 少しだけ首を後ろへ傾け、口づけを強請るとすぐにでも欲しいものを寄越してくれ、舌を口の外へ出してれろれろと互いの舌を舐め合いながら吸い、口づけが解かれるとまた耳へと戻り、しゃぶってくれる。
 そしてまたキスといった流れを何度か繰り返すと、鳴戸の手が不穏に動き出し、まるで女の胸を揉むかのように龍宝の胸筋で膨らんだ胸を両手で擦り出す。
 これにも当たり前のように感じてしまい、指先で乳首をぴんっぴんっと跳ねられるとまるで疼くような快感が胸から流れ込んでくる。
 この久方ぶりのセックスに興奮が隠せない。
 男としてこの身体を使うことはあっても、こうして一方的に身体を愛されるのは十数年前、鳴戸と最後にセックスをした日以来だ。それは、気分が高まっても仕方が無いだろう。
 それほどまでに、この触れ合いは心地が良すぎる。
 自然、呼吸も早まりまるで獣のように息を吸っては吐き、鳴戸の手管に溺れてしまう。
「……カラダ、熱くなってきたな。耳も顔も、真っ赤だぜ。キレー……すっげえ、きれい。やっぱ、お前は特別だわ。めちゃくちゃ、かわいい」
「や……かわいくは、ない、です。……んっ、んあっ!」
 まるで咎めるように乳首を抓まれ、くりくりと捻られる。
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