箱舟

 もはや憚らず、大声を上げて善がり狂ってしまう。
「やっあああああ!! うあっ、やあっやあああっ!! やっだ、おやぶんいやだっ!! おや、おや、おやぶんっ!! やだああっ!!」
 いじられているペニスの先端からトロトロとカウパー液が溢れ出て、鳴戸の手を濡らしそのぬめりで扱かれるたびにくちゃくちゃと音が立つようになる。
「ほーら、すっげえデカくなってやらしい汁も出だしたぜ。これは、男のモンだ。そうだろ?」
 快感により、涙で霞む目で鳴戸を見て何度も頷くと、さらにアナルに埋まっている指の動きは苛烈を増し、責め立ててくる。
「やっ、あっあっあっあっあっあっ!! ああっ、やだああっ!! あっあっ、や、や、イクッ……! い、い、イクッ!! イクイクイクイクッ!! ああああああ!!」
「いいぜ、イっても。俺は構わねえ。ほら、白い汁出してみろって。お前の子種が入ったエロい汁、さっさと出せ」
「あっ、はっはあっはあっはあっはあっはあっはあっ、やっあああああ!! イックうううっ!!」
 ナカで暴れ回る指と、そしてペニスに絡み扱き上げてくる手の二点責めに、もう出ないと思っていたザーメンが胎のナカで快感と共にぐるぐると行き場を求めてぐるぐると巡っているのが分かる。
 もう、絶頂は目の前だ。
 内ももが震え、足は両脚ともつま先立ちになり、腰が勝手に捩れ始める。
「これでもイかねえか! さっさとイキやがれ!!」
 ぐっと先端に鳴戸の親指の爪が押し当てられたことが最後の刺激になり、あられもなく絶頂へと達してしまう。
「うああああああっ!! やあっやあああイック、イック、イック、イック、イックううううっ!! あああっ、あああううううー!! やあっやあああああああああー!! ああっあああああー!!」
 腰がガクガクガクガクッと上下に捩れ動き、ペニスはビグビグと跳ねながら何度にも分けてザーメンを吐き出し、それは鳴戸の手や、龍宝の身体に飛び、強烈な快感に身体が勝手に跳ねたくり、去ってくれない快楽に、龍宝は溺れるばかりだ。
「はあああっ! や、あっ……き、気持ち、気持ちいっ……!! はあ、ああっ、あううううっ……!! うううっああああああー……!!」
 身体から急激に力が抜け、ばさっとベッドに転がるとそのまま指はアナルから抜けてゆき、目を瞑ったまま放心していると唇に柔らかく、そして優しく温かな感触が拡がる。
「はあっはあっ、おやぶん……また、イった……」
 重い瞼を開けると、至近距離に鳴戸の顔があり、手の甲で優しく頬を擦られる。
「いま俺が言ったこと、覚えてるか。お前は男だ。すね毛もありゃ腋毛もあるし、乳も無けりゃチンポも付いてるけどな、分からせたよな?」
 無言で頷くと、萎えたペニスをいたずらに手でいじられまた身体がピクンと反応してしまうが、構わず鳴戸は続けてくる。
「でもよお、仕方なくねえ? 大体、お前が女だったらだとか自慢じゃねえが俺は一度も思ったことないぜ。男だからこそ、俺と肩並べて戦えるわけだし、俺が護らなくちゃいけないほどお前は弱くもねえ。だから、俺はお前が男でよかったと思ってる。でなけりゃ、ただの女なんて足手まといだ。でも、お前は違うな?」
「おやぶん、おれっ……」
「話を聞け。だから、もう二度と俺の前で男だからとか言うんじゃねえぞ。今度それ言ったら、平手じゃ済まさねえ。殴りつけて犯してやる。抱くんじゃねえ、犯すぞ」
 その眼光の鋭さに、思わず生唾を飲み込んでしまう。鳴戸は、本気だ。犯すというのも、本気で言っている。
 知らず脂汗をかくと、今度はうって変わって優しい表情になり、顔が近づいてきたので思わず目を硬く瞑ると、額にふわっと柔らかな感触が拡がり、ついでに唇にもちゅっとバードキスが落とされる。
「だから、つまらねえことに拘ってねえで、お前はお前という一人の、龍宝国光として俺の傍に居ればいい。なにも引け目なんて感じることねえ。俺はな、龍宝、お前って人間が大好きだぜ。……ちゃんと、愛してる。男でもな」
 そしてまた手の甲で頬を撫でられたことで涙腺が決壊し、ぶわっと涙が湧いて出てきてシーツを濡らしてゆく。
「おやぶんっ……! おれ、俺っ……!!」
「いい、なにも言うんじゃねえ。ほら、こっち来い。泣くなら、俺の胸で泣きな」
 ベッドに倒れている龍宝と入れ替わり、鳴戸がベッドに寝転ぶとそのまま背を抱かれ包み込むように抱かれる。その温かさと熱に、さらに涙が湧いてきて広い胸に頬を押し付けしゃっくり上げる。
「俺、おれっ……おやぶんが好き。こうやって言うのも、前は憚られていたけど……おやぶんが分からせてくれたおかげで、ちゃんと本当の気持ちで言える。好きです、愛してます。おやぶん、あなたが、好きっ……!!」
「うん、それでいい。大体な、前からだって俺はお前見て勃ってただろ。無理やり勃たせてたわけでもなく、お前に欲情してたから勃ってただけで、なんか勘違いしてるみたいだけど俺は性的な眼でお前をずっと見てたからな。だから、勃って当たり前ってわけだ」
「そんな……男の俺を、見て……?」
「言いやがったな。無理やり犯されてえか」
「そ、それはいやですけど、でも……そうですか……親分は、俺を、俺のことを……」
「ああ、好きだったぜ。お前が言い出す前から、俺はずっとお前が好きだった。俺は大人だからな。下手な感情ぶつけてお前を壊すのが怖かったけど、お前から言い出してくれたから……だから、勃った。好きだからな、勃つのは自然だろ?」
「好き……親分。大好き……愛してます」
 漸く泣き止むと、やってきたのは静寂だったが時折、強風に吹かれて窓と本棚がガタガタと揺れる。
「風、強いですね……」
「こういう日は、絡まって寝るに限る! さて、そろそろ俺たちも寝るか。いい時間じゃねえ? 寒くねえように、抱き合ってな」
「おやぶんっ!」
 歓喜に震え、抱きつくと鳴戸によって掛け布団がかけられ、二人寄り添って大きく息を吸って吐く。
 すると、部屋はすぐに二人分の寝息に満たされ、外の寒さも愛し合う二人の前ではただただ、無力なだけだ。
 温かな心を胸に、恋人たちは寄り添って眠りにつく。

Fin.
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