深夜喫茶

 Gスポット責めも兼ねたその律動に、龍宝は射精準備に入った。鳴戸が許してくれれば、もういつでもイける。そう思うと、射精感も倍増しだ。
 内ももが痙攣し、足がガクガクと震え始め立っているのもつらいほどだ。
「だめ、だめですイクッ……! ああああイっちまう!! おや、おや、おやぶんっ!! イクッ! い、いい、です、かっ? い、イクイクイクイクッ!! あああああ限界!!」
「おお、イクか。一緒にな」
 何度もその言葉に頷き、ペニスを解放するとぶくぶくぶくっと膨れ上がり、どびゅっと勢いよくザーメンが龍宝のペニスから飛ぶ。
 それを追って、鳴戸のペニスも倍くらいの大きさに成長したと思ったらナカにブチ撒けられる熱い体液。どうやら、イっているらしい。何度にも分けての熱い飛沫を胎内に感じる。
「んあっ、ああっ!! い、い、イってるっ! ああああきもちいっ、きもちいっ! はあっ、ああっ……!」
「気持ちイイな、お前ン中。ギュンギュンに締まってるぜ。名器持ちだなー、龍宝は」
「はあっはあっ……ナカ、熱いっ! おやぶんのが、拡がってるっ……! あっついのが、ナカいっぱいにっ……」
 身体から一気に力が抜けてゆく。それを支えたのは鳴戸で、共に浴室の床に座り込み荒い呼吸を整える。その際、龍宝は鳴戸の腕の中で抱えられており、触れ合っている熱い肌を感じながら幸せに浸る。
「はあっ、はあっ……おやぶん、気持ちイイ、です。よすぎて、はあっ……」
 すると、額にちゅっと音を立ててキスが落とされますますきつく抱かれる。その熱い抱擁に、悦びはあるもののどこか違和感を感じ顔を見ようとするが、それは許されず暫く、そのままでいた二人だった。
 後、いい加減離れなければと同時に動き出し、シャワーを浴びてさっぱりしたところで着てきたスーツに着替え、夜の街へと繰り出す。
 外は季節柄か、かなり冷え込んでいたが火照った身体にはちょうどいいと、スッキリとした春の夜の空気を肺いっぱいに吸い込む。
 ちらりと隣を見ると、鳴戸は難しい顔をして黙り込んでおり何処か悲壮感さえ感じるその表情に疑問を覚えるが、鳴戸にもいろいろ思うところはあるのだろうと黙って深夜喫茶へ向かう龍宝だった。
 店はやはり深夜だけあってあまり人の姿も見えず、窓際に二人向かい合って腰掛けると早速、おしぼりとお冷を持ったウエイターがやってくる。
「コーヒー二つ」
 鳴戸がそう言ってウエイターを追っ払おうとするが、龍宝はそれを止めた。今はコーヒーといった気分ではない。
「あ、俺はホットミルク」
「いいから、コーヒー二つ持ってこい」
「おやぶんっ……!」
 戸惑っているウエイターだが、さらに鳴戸は畳み掛けるように「コーヒー二つだ」そう言って念押ししてしまい、二人きりの空間が拡がる。
「俺だって飲みたいものくらいありますよ」
 しかし、鳴戸は答えずお冷をのどに流し込み外を眺め始めてしまう。
 どこかおかしい。
 どこがと聞かれても困るが、いつもの鳴戸ではない。
 コーヒーが運ばれてきて、龍宝は飲みたくもないコーヒーを口に含むと、徐に鳴戸が重そうに口を開いた。
「なあ、龍宝。俺はな、戸惑ってんだ。ひどく、戸惑ってる」
「戸惑ってる……? なにに、ですか」
「お前のことだよ。俺は元々、女好きだし男を抱く趣味は持ち合わせてねえと思ってたがお前がな、かわいいんだ。あんまりにもかわいいもんだから、戸惑ってる」
「それは……」
「抱いてる最中、お前が気持ちイイだとか、好きだとかって素直に訴えてくるとな、すごくかわいいって、思っちまうんだよ。誰のこともんな風に思ってこなかったからな。だから……戸惑ってんだ」
 そう言って、鳴戸もコーヒーを飲み始め沈黙が二人を支配する。
 龍宝もその言葉に対してなんと返事をしたらいいのか、分からないのだ。鳴戸が感じている戸惑いは鳴戸だけのもので、龍宝はただ幸せを噛み締めていただけなのだから。
 どことなく淋しくなってしまい、窓の外に目線を移し苦いコーヒーを味わうようにして、ゆっくりと飲み下す。何故か、手に汗をかいてしまう。焦っているのだろうか、鳴戸が発した言葉に対して。関係の終わりを、考えての発言なのか気になる。
 どれくらいかけてコーヒーを飲んでいたのか。店内の時計を見ると午前三時をゆうに回っている。
 すると徐に鳴戸が腰を上げ、腕を引いてくるので大人しく立ち上がりコーヒー代は鳴戸が支払い、二人はまた夜の道を歩く。
 その間、終始無言でどこか居心地が悪い。
 そして部屋に着き、龍宝が先に入ると扉が閉まる前に鳴戸が背後から抱きついてきて、あごを取られたと思ったら後ろにぐいっと捻られ、口づけられる。
 かすかにコーヒーの味がする。そんなことを思っているのも忘れるくらいの激しいキスが待っていて、まるで縺れ合うようにしてベッドへ行き、抱き合う。
 スーツはまるで毟り取られる勢いで脱がされてしまい、強引とも呼べる荒々しい愛撫を受けつつ、先ほど交わしたどのセックスよりもさらに激しいものを強いられ、ベッドの上で息を整える。
「はあっはあっは、は、はっ……おやぶん、はあっ……」
「龍宝っ……!」
 息もままならないうちに激しく口づけられ、龍宝も正面から抱いてくる鳴戸にしがみつく形でキスを受け入れ、舌を絡め合い舐め合う。
 ふっと唇が離れ、じっと見つめ合いまた触れるだけの口づけを何度も交わし、そのうちに熱がだんだんと引いてくる。
 それでも視線を外すことなくじっと鳴戸の精悍な顔を見ていると、額を撫でてきて一言、こんなことを言った。
「戸惑ってんだ」
 その言葉を受け、龍宝は鳴戸の身体に腕を回し、こう返す。
「親分の戸惑いは分かります。けど俺は……俺は、幸せです。とても幸せで……それだけじゃ、いけませんか」
 返事は、無かった。
 代わりに、身体が潰れそうな勢いできつく抱きしめられる。実際、息がしづらいほどだ。
 その力強さに、少しの切なさを感じる龍宝だった。

To be continued.

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