甘い呼吸をどうぞ

 ちらりと後ろを振り向くと、ちょうど鳴戸も全裸になったところでふと目が合う。じっと見つめてくるそれに、目線を外すことができず見つめ合いになる。
 どちらからともなく、まるで引き寄せられるように抱き合いそして、顔を寄せて唇を合わせる。目を細め、唇が触れ合った瞬間だった。勝手に目が瞑ってしまうと、さらに感触がダイレクトに伝わってくる。
 鳴戸の味は、洗練された男の味でかすかな苦みを感じる。と同時に、少しの甘さも相まってとても不思議な味だと思う。体温は龍宝よりも高めなため、口づけられ舌でまさぐられると咥内にまで熱が伝わってくる。気持ちイイと感じる瞬間だ。
 上顎も丁寧に舐めてくる。身体の芯がゾクゾクするほどの快感が口から身体にかけて走り、思わず背に爪を立ててしまう。
「ん、んっ……んん、んう、お、や、ぶっ……んん」
 今度は角度を変え、触れるだけのキスを何度も施される。あまりキスという行為もしていない龍宝にとって、鳴戸と交わすそれは特別なものに他ならない。ただただ、ひたすらに快感が湧き上がってくるような、そんな感じがする。
 だんだんと夢中になってくると、ふっと唇が離れつい名残惜し気な声が出てしまう。
「ん……あ……」
「続きは、風呂の中。なっ?」
 仕方なくこくんと頷くと、先頭を切って風呂へと向かう鳴戸に続く。バスルームは広く、お目当てのジャグジー風呂は男二人で入っても余りあるほどスペースが取ってあり、まず先に鳴戸が入り続いて龍宝も足に湯をつけた。
「あっちち!」
 湯加減は熱いほどでつい声が出てしまう。手で少し前を隠しながら胸まで浸かると、鳴戸が両手を拡げ呑気な声を上げた。
「あー……昼間風呂はいいねえ。向かいには美人がいるとなりゃサイコーだな」
「なんですか、美人って。でも、気持ちイイです」
「龍宝、こっち」
 なんのことだか分からなかったが、鳴戸が拡げた片手を上下にぴこぴこと動かした。どうやら、隣に来いということらしい。
「仕方のない人ですね、親分は」
 湯の中を漕ぐようにして近づくと、急に腕を取られ引き寄せられたと思ったら湯の中で足を取られ、あっという間に鳴戸を跨いでしまう体勢に持っていかれる。
 なんたる手際の良さか。
「危ないですよ、親分潰したらどうするんです」
「潰されるほどヤワじゃねえっつの。それより、龍宝……」
「ん? あ……」
 ずいと近づく鳴戸の男らしく整った顔。龍宝からも顔を近づけるとふわっと唇に温かく湿った感触が拡がる。反射で口を開けると、ぬるっと舌が咥内に入り込んできて上顎を丁寧に舐められる。龍宝の弱いところだ。それを知ってか知らずか、長い間くちゅくちゅと音立てながら舐られ、思わず息を乱してしまうと今度は舌にしゃぶりつかれる。
 一方的にまるで責めるような口づけを施され、つい息が上がり無意識に鳴戸の両肩に腕を置いてしまい、爪を立てる。
「んっんっ……んふ、んん……ふ、あ、おや、ぶんっ……んっ」
「甘い声だな、龍宝。気持ちイイか」
 口づけの合間にそう問われ、返事の代わりに龍宝から口づける。ちゅっと音を立てて控えめに唇を吸うと、咥内に鳴戸の味が拡がる。甘いような、香ばしいようなクセになりそうな味だと思う。存分に舌に乗せ、味わっているとまたしても舌を絡め取られ柔く噛まれる。
 じんっと、下半身に力が漲る。緩くだが勃ってきた。
 鳴戸のキスはこれだからいけない。龍宝の中に深く眠る欲情を引き出すのが何故か上手すぎる。おかげですっかりその気になってしまい、肉棒が硬くしなってゆく。
「んっはあっ……だめ、だめです、親分。た、勃っちまいます」
「じゃなくて、もう勃ってんだろ。ほらココだよ、ココ」
「ココって……っあ!! ……やっ……ああ!!」
 興奮し切っている自身を、鳴戸は湯の中に手を突っ込んで探し出し乱暴に握ってくる。たったそれだけでも、射精してしまいそうに感じてしまう。
「はあっはあっはあっはあっ、おや、ぶんっ、だ、めです……!」
「なにがだめなんだ? ここをこうしてやると、こうだろ」
 くりくりと手のひらで亀頭を包むように撫でられ、思わず身体がビクビクと跳ねてしまう。
「やっ、あっ……あっああっ、き、もち、いっ……あぁっ」
 鳴戸の上に乗っているため、少しだけだが龍宝の身体が上に来ているのをいいことに、ぷちゅっと音を立てて乳首を乳輪ごと口に含まれ、唾液と共にシェイクするように刺激されるとあまりの快感に腰が震え始めてしまう。いつの間にココがそんなに良くなったのか。謎が謎を呼ぶが、とにかく気持ちがイイ。
 上は乳首責め。下はペニスをいじられ、もはや悶絶の龍宝だ。身を捩り身体をくねらせながら鳴戸の施す愛撫に溺れる。
 そして両乳首とも真っ赤になるほど責められた頃、ふと鳴戸の表情が変わった。なにか悪だくみでも思いついたような顔だ。
 龍宝はその表情に、何処か期待してしまっている自分を感じていた。ストイックで通っていた自分は一体、何処へ行ってしまったのだろう。ぼんやりとする頭の中で考えたが答えは出なかった。

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