そこに愛はあるか

 つい釣られてイってしまいそうになった鳴戸だが、それをなんとかこらえさらに逞しい腰の動きで責め立ててやることにする。
 パンパンパンパンと、二人の身体がぶつかり合い肉を打っているような音が部屋に響き渡る。そして、それに混じり龍宝の喘ぎも加わり鳴戸の興奮をさらに押し上げてゆくようだ。
 今度は体勢を変え、片足だけを持ち上げて横から責めてやる。
 さすがに鍛えてあるからか、身体が柔らかい。そのおかげもあり、がしがしと腰を遠慮なく使っても女のように痛がらない。どころか、興奮すら与えているようで半泣きの龍宝がまたしても強請りを始めた。
「も、っと、くださいっ……! 親分もっとぉ!! 親分ください!!」
 龍宝の我を無くした叫びに、鳴戸の理性も吹っ飛ぶ。
 足を乱暴に離し、両腕をクロスさせて手首を引っ掴みそのまま遠慮という言葉も、慈悲という言葉も無くひたすらに龍宝のアナルへ向かいペニスを打ち付けてゆく。
「うあああああ! あああっあああああううう気持ちイイッ! あああああイイ、イイ、イイですイイッ!」
 そのうちにやってきた鳴戸の限界。
 腰の動きが自然と早まる。すると、それが分かったのか龍宝も最後の射精準備に入ったようだ。
「イク! イキます、イ、きますッ……! ああああイックううううっ!! おや、おやぶんも! 親分もっ、あっあああああ!!」
「ああ、イク時は一緒だな。よっしゃっと、来い!」
 腕を引き身体を起こしてやって今度は対面座位に体勢を変え、下から穿ってやる。するとすぐにでも龍宝が抱きついてきて、耳元にちょうど龍宝の口が当たり、湿気った息が吹きかかってくる。その熱さにも感じ入ってしまう鳴戸だ。
「はあっはあっはあっはあっ、おや、ぶんっ……イ、イクッ……!! ああっあー!!」
 がっしと力強く抱きつかれたと思ったら、ガクガクガクガクッと身体全体が捩れ傾ぎ、最後にビックンと跳ねると、腹に熱いものが何度にも分けて飛ぶのが分かった。それと同時に、胎内がぎゅぎゅぎゅっと締まり、その締まりに負けた鳴戸は龍宝の胎内へ大量のザーメンをブチ撒けてしまう。
 何度にも分けて龍宝をザーメンで犯す。その背徳に、思わず背を震わせてしまう。
「ああっ、あああああー……ナカで、親分のが拡がってる……熱いぃ、き、気持ちイイ……はああ」
「龍宝……」
 ぎゅっと強く互いを抱きしめ合い、射精の余韻にどっぷりと浸る。抱いている身体が、心底に愛おしく感じる。今まで抱いてきた人間の中でも、こんな感情を覚えたのは初めてのことだ。それほどまでに、龍宝は悩ましい色気を出しつつ、そして何よりもかわいかった。しがみついてくる腕の強さも、身体の温度も、かおりも何もかもが心地よく鳴戸の心を解きほぐしてゆく。
 性別を超えた愛というものを腕の中で感じていた鳴戸だったが、龍宝は呼吸が整うとそろりと鳴戸から離れた。
「龍宝? どうした」
 その表情は硬く、キスの一つでもして甘やかしてやろうと思っていたのだが龍宝はそのまま、腕の中から抜け出てしまい、自分からペニスを無理やり引き抜いたと思ったら、さっさとベッドから降りてしまう。
「俺、ちょっとシャワー浴びてきます」
 もっと余韻を愉しみたいと思っていた鳴戸だったが、やはり身体が気持ち悪いのだろうか。そう暗に言っているのであれば悲しいことに他ならない。
 仕方なくベッドに寝転ぶと、まるで抱き合ったことが嘘のように思えてくる。顔を正面から横に移すと、そこには龍宝の体液が大量に散っており先ほどのことは嘘でも冗談でもないことを教えてくれる。
 目を瞑り、龍宝の痴態を思い出してみる。ただそれだけで、じわりと身体が汗をかくかのように熱さが蘇ってくる。
 しかし、遅いと思う。シャワーだけではなく、湯船にでも浸かっているのだろうか。それにしても遅すぎやしないか。時計を見たわけではないがいくらなんでも遅すぎる。
 ベッドから起き上がり、腰にタオルを巻いた鳴戸はバスルームへと向かった。そして扉を開けるとそこには頭からシャワーをかぶっている龍宝の姿があったが、熱気が感じられない。
「ば、ばか野郎っ! 何してんだ風邪引いちまうだろうが!」
「おやぶん……」
 慌てて傍により、温度を確かめてみるとそれは明らかに水で、湯ではなかった。龍宝を見るとその唇は真っ青に染まり、白くもなっており慌ててコックを捻って水を止めバスルームから連れ出す。
 何とかバスタオルで身体の水気を取り去り、ベッドの中へと引き摺り込む。その身体は、氷のように冷たく、寒いのだろう腕の中の龍宝の身体はガタガタと震えており、ガチガチと歯を鳴らして目を硬く瞑っている。できるだけ体温を分けられるようぎゅっと身体を抱き、腕の中に閉じ込めてしまう。
「なかなか帰って来ないと思ったら、お前は修行僧か。……んで、なに考えてた」
「申し訳なくて……。男の俺を抱かせてしまったそのことが、今さらながら怖くなりました。尊敬しているあなたに、あんなこと……」
 目尻を湿らせる龍宝の身体を、鳴戸はさらに力を籠めて強く抱きしめる。
「今さら後悔なんてしてねえよ。そんな後悔はな、どっか行っちまった。腕の中でかわいく啼くお前見てたらそんなもん、吹っ飛んで行っちまうよ。それより、後悔してんのは龍宝、お前の方じゃねえの?」
「そんなのしてない! して、いないです。ただただ、幸せでそして、少し悲しいです」
「今はそれでいい。俺はな、今後もお前を抱き続けるぜ。この鳴戸竜次、一度愛したらもう止まんねえぞ」
「あい……? 愛って、親分」
「いい加減堪忍して、お前は俺の中の宝でいてくれ。な、龍宝」
「はいっ……! ついていきます。俺は、あなたにずっと、ずっとついていきます」
「それでよし! 本気になった俺はしつこいぜー?」
 そう言って額に口づけると、今まで見たことも無いような照れたような、はにかみを見せてくれた龍宝に愛しさが募る鳴戸だった。

To be continued.

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