ひろあか | ナノ


入学式の前夜にネクタイとリボンで迷ってる目の前の女は小1時間鏡の前で首を捻っている。何をそんなに悩んでいるんだと聞けば規定のスカート丈より随分と短く折られたスカートを翻しながら首元にをあてがったリボンを俺に見せた。

「ネクタイは大人っぽいけどリボンは可愛くてモテそうじゃん?」

じゃん? じゃねえよ知らねえし俺以外にモテてどうすんだよ。つうか誰にモテてんだ。クソ、馬鹿みてぇにヘラヘラしやがって。 腹の底からどろどろに溶け出した嫉妬やら苛立ちを理性でなんとか抑えつけて、未だに悩んでるアホなまえの襟の間に俺のネクタイを引っ掛けて素早く締めた。わざとぎゅっと締めると潰れたカエルのような声を出したなまえが下から睨み付けてきたがちっとも怖くねえ。つうか、お前が余所見してンのが悪ぃだろ。

「てめえにゃこれが似合ってんだろ」
「え〜! ネクタイ交換とか恋人みたいじゃん! てか、恋人か……。あっそれより私ネクタイ締めれないわ」
「雑魚避けだわ。 チャラついてんじゃねえぞテメエ……」

なまえは綺麗に結ばれたネクタイを鏡でまじまじと見詰め、口元をだらしなく緩めた。その間に太腿まで折り曲げられたスカートの裾を握って下まで力いっぱい引っ張って膝丈にしてやった。なまえはそんな俺を見てよケタケタと笑いだし「勝己くんお母さんみた〜い」などと宣っている。
そして続けざまに苛つく俺を気にも留めず「毎朝締めに来てね♥ 」なんて言われなくてもそのつもりだわ。






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