ヤンキー座りをして煙草をふかしている彼の腰から下に目がいってしまう。服とジャージの隙間から覗く産毛すら生えていないような細く綺麗な腰、チカチカと目が痛くなるほど鮮やかなピンク地に大きいヒョウ柄。
「半間くん、またパンツ見えてる……」
見たくないのに色のせいかなんなのか何故か目が離せず、げんなりと肩を下ろしながら丸見えのパンツを指差した。半間くんはそんな私を一瞥して、全く気にしていないように抑揚のない声で「なまえちゃんのえっち♥」と言ってもくもくと白い煙を口から出していく。
「見たくて見てるんじゃないよ。隠して」
「え〜なまえちゃん嫉妬してンの? かわい〜」
「……」
「無視?」
ペラペラとよく喋る口だ。そもそも私達は付き合ってないし半間くんのパンツが見えてようが中身のアレが外にボロンしようがどうでもいい。どうでもいいけれど、派手なパンツに目がいってしまうのは不愉快過ぎるし目に毒なので隠してほしいのだ。
「逆にさ……私のパンツが剥き出しになってたら嫌じゃない?」
未だにプカプカ燻らしている半間くんは切れ長のつり上がった瞳をそっと細めて、じろりと私を睨む。殺気立ったそれに、心臓がどくどくと早まって後退りをした。半間くんは吸っていた煙草をコンクリートの上に落として立ち上がり、サンダルで踏み躙ると、あっという間に私との距離を縮めてしまった。
こつんとコンビニの冷たい外壁に後頭部がぶつかって逃げ道は塞がれてしまった。何故だか怒っている半間くんはじりじり近付いて、鼻先が触れ合ってしまいそうだと他人事のように思う。
「そンなん、オレが許すわけねーじゃん」
え、えぇ、恋人でもないのに? という言葉は苦くてすーすーする最悪の口づけによって封じられてしまった。
2022'0318