03



四限目が終わりとうとう始まった昼休み。

俺は科学室から一組へ直行する事にした。

早く胸のモヤモヤを取り除きたい。


はぁ…

気分が悪くなってきた。


「山口も着いてきて!!」

「はぁ?なんで俺が…ー」

「お願いだって、怖いんだって、山口が来ないなら俺は行かない、」


俺は山口の腕に両手を巻き付けて離さない事にした。


それこそ抱っこちゃんみたいな感じで。


絶対、絶対に離してやるもんか‥!


「……しゃあねーなぁ、……絶対に大丈夫だって、」


山口は苦笑いしながらも付き合ってくれる。

優しいお前が大好きだ。




「おぉ愛斗、待ってたぜ。」

「…で、用って何?」


相変わらず山口の腕にしがみつきながら尋ねると、野口は鞄をガサガサし始めた。


「はいこれ、昨日休んでたから渡せなかったんだよ。」

「えっ…?」


野口に渡されたのは綺麗にラッピングしてあるカップケーキだった。

手作りっぽくて、しかも凄い美味しそう。


俺は思わず肩を落とした。

緊張と不安で張り詰めていた心が一気に解けていって、さっきまで悩んでいた自分が阿呆らしくなった。


「なんだぁ……」

「あ…要らなかった?」

「いや、そうじゃなくてっ…俺何にも用意してないのにありがと〜!めちゃくちゃ美味しそう!」

「良いって事よ!この可愛い子ちゃんめ!!」


褒めた事に対する照れ隠しなのか。

意味不明なキャラで返事をくれた野口がいつも通りで、俺は自然と笑顔を浮かべた。

さっきまでの自分が本当に馬鹿みたいだ。

少しでも野口を疑ってしまった自分が何だか情けない…


「…て言うかさっきから気になってたんだけど…まなちゃんはどうして山口に引っ付いてる訳?」

「え?」


野口がそう聞いてきて、そう言えば!と山口の存在に気が付く。

付いて来てもらったけど、何だかんだで結局無意味だった。


「何でって…ん〜、俺の山口だから?」

「うわっ、それは無いわ。」

「ヒドッ、冗談じゃん!」


更にピトッとくっ付いて冗談をかましてみたら、山口が嫌そうに顔を歪めさせた。

そこまで嫌がる事ないだろ。

ムカつくなぁ。


そんな事を思いつつ野口へ視線を戻すと、感情の読み取れない無表情で黙り込んでいた。


「……野口?」

「ぇ…あぁ、冗談か。」

「うん。当たり前田のクラッカー。」

「愛斗、それ古ッ!!」


山口のツッコミが決まった所で密かにお腹が鳴った。

お腹の虫曰わく、昼ご飯が待ち遠しいらしい。


「じゃあ野口、ありがとなぁ!!」

「おう。」


それから俺は、野口に貰ったカップケーキを片手にクラスへ返った。



これを食べるのが待ち遠しくて。

それはきっと。

ふあふあ甘い味。


to be continued..


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