05


駅のホームで電車を待つ。

試験期間だからか、今の時間帯は色んな学校の学生で溢れていた。



ざわめくホームの中、チラリと横を見れば、眠たそうに欠伸をする愛斗君の姿。

何だか微笑ましくて思わず目を細めた。


「そう言えば面接って何時から?」

「えっと…六時半、」

「まだまだ時間あるな…」


腕時計を見れば丁度一時を指していて、大分時間が開いてしまう。


…や、ヤバくないか?


愛斗君なら「一端家に帰るわ」とか普通に言いそうだから焦る。






愛斗君と帰宅している今の状況は奇跡に近い。

いつも池内と居る愛斗君が俺と一緒に放課後を過ごすのは初めての事で、一言で表すなら『新鮮』そのもの。


何より嬉しかった。


こんな機会はなかなかないのに、このままでは…と思うとどんどん焦りが出てくる。

悪い流れの予感に俺は脳内をフル回転させ、愛斗君を帰らせない方法を一心で考えた。







「……なんか近くね?」

「そうかー?」


愛斗君、わざとだよ。



夢中で考えている間に電車がきて、流れで乗り込んだ。

手すりにもたれる愛斗君の横に立ち、凄い至近距離で見下ろす。

愛斗君はデロデロに伸びたカーディガンを口元に当てながら「だから近いって…」と呟いた。


可愛い。


「この後どうする?取り敢えず飯食いに行くか。」

「良いけど…近い。」

「何か食べたいもんある?‥マックとかミスドとか‥近くに安くて美味しいオムライス店もあるけど」

「なんでも…だから近いって、聞こえてます?」


睨んでくる愛斗君と渋々距離を取る。

折角の機会だったけど、最悪の事態を回避出来たので良いとしよう。



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