03


俺が弁当に手で蓋をしている所…

愛斗君の弱々しい声が聞こえた。


「俺…結構こう言うの気にするんだからな……ヤバい、目が潤んできた…」

「マナトッ!!マジゴメンな!?泣くなよー!?」


涙もろいと言うのは本当らしい。

ガチで目が潤んでて可愛いんだけど可哀想だ、可愛いけど。


「愛斗君おいで、ヨシヨシして慰めてあげる。」

「…遠慮しときます。」


心底嫌そうな顔を向けられた。

今度は俺がショックを受ける番らしい。

ショボーンと肩を落とした。



間もなく、池内が愛斗君の方へ前屈みになって手を伸ばす。


「ゴメンな…、」

「……別に良いけど、…今度絶対行くから!」

「おう、片付けとく!!」


どうやらあっという間に仲直りしたらしい。

仲直りしたのは良い。

別に良いんだけど、一つだけ気に入らない事が。



俺がヨシヨシしたかったのに愛斗君の頭の上には池内の手があって。

ムカッとする。

ムカッっと…。



後、もう一つあった。

池内と愛斗君が二人だけで遊ぶってのが気にくわない、本当に面白くない。

嫉妬ってヤツかな。

どっちに対しての…とかじゃなくて、仲間外れにされた感じ?


よく分かんないけど。

すげぇムカつく。








「でも野口も一緒がいいなぁ。」


何時までも頭を撫でている池内の手をパチンと叩き落として愛斗君がそう言った。


すげ…良い音したな…。


「いてっ…、…だってさ。」


池内が叩かれた方の手をブラブラと振りながら俺に話を降ってきた。

今度は池内が眉間に皺を寄せ、涙目でこっちを見てくる。

何がなんだか。

取り敢えず言える事は、特に可愛いと感じる要素がないと言うこと。


「野口も一緒に行こー。てか野口が居ないと迷子になる。」


いつの間にかモヤモヤもムカつきも消えていた。

愛斗君が嬉しい事言ってくれるから、友達っていいな…なんて不覚にも思って…。

なんか俺、青春中だな。


「俺は保護者か。」

「ブハッ!!!グッチーママ!!!いいんじゃね!?」

「愛斗君、今日からママとお呼びなさい。」


言ったら二人とも「ちょ、オカマ口調!!!」と爆笑し始めた。

こういうのってやっぱり楽しい。

三人でふざけて笑って、でも一人でも欠けたら誰かが悲しんで…

気が付いたら三人で居たから、きっと最近の話だけど。

当たり前に三人で居て、これからも笑ってたいな…なんて。


「まなちゃま、何でもママに言いなさいざます。」

「え…、マジで?…じゃあ、ママに手繋いで貰おうかな、」

「喜んで!」


反射ってヤツか。

思わず素で返事をしてしまった。



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