05



「…や…康喜‥くん、」


次の日。

池内が何度も言うから結局折れた。

一度ぐらいなら…試しでならいいかなぁって事で。

にしても…

名前呼びとかちょっと恥ずかしいなぁ…。


「…、」

「…えぇ…なんで?」


まさかの展開。

勇気を振り絞って言ったのに野口は無言のまま変顔をし始めた。


しかも



昨日より悪化してる。



「ちょ、ちょ、グッチー…グッチーの顔‥!!や、やめっ、グッチー…!!」


ツボに入ったらしい池内が机をドンドン叩きながら爆笑し始めた。

何だよ…

結局なんて呼べばいいんだよ。


「…もういいや、普通に野口って呼ぶ。…じゃあな!」


いろいろと悩んだけど、もうこれでいい。

どれにしたって野口は変顔するし意味分かんないし。

最終的に野口の呼び方は「野口」で定まった。






「愛斗くんだー!おはよ!」

「野口おはよー!」


最近は野口呼びにも随分と慣れてきた。

ただふざけてる野口は、今でも時々アイちゃんとかマナちゃんとか言ってきて相変わらず自由過ぎるけど。



そしてもう一つ。

最近気が付いたちょっとした変化。

いつもの様に俺の名前を呼びながら手を振ってくる野口が、その度に笑う様になった。

よっぽど名前を呼んで欲しかったのか、名前を呼ぶ度に嬉しそうな表情を浮かべていて…、

この間なんかは「まなとくーん!」と叫びながら両手を振ってきた。

それを見た俺は「大袈裟だよ!」って思わず吹いてしまった。


まぁ、そんな事を言いながら野口に負けないくらい大袈裟に返したけど。





「康喜君!」

「……、」

「ぐ、グッチー…その顔やめっ…!!」


ただ何故か、康喜君で変顔をするのは変わらなかった。



to be continued..


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