01



「あい殿に質問がありまする。」

「はぁ…?」


どうしよう。

野口がまた可笑しい…、変だ。

とは思うものの、これが野口康喜だから仕方がない。


「俺の名前知ってる?」

「…知ってるよ。」

「言ってみて。」

「…野口康喜。」

「正解。」


と親指を立てた野口。

その面持ちは真剣そのものだった。


「俺さ‥、あいちゃんに名前呼ばれた記憶がない。」

「そうだっけ?」

「おう。だからな、名前呼んで欲しい。」

「…、」


とぼけてみたが意味はなかった。



野口の言う通り。

俺は野口の名前を呼んだ事がなかった。






元々野口は池内の友達で、時々話す程度だった。

だから自然な流れで名前を呼ぶキッカケを逃してしまい、時間が経てば経つ程にタイミングが掴めず、今に至っていた。


はぁ…高校生にもなってこんなのってどうなんだろうな、


「名前呼んで欲しい。」

「…あいちゃんって言うの止めるならいいよ。」

「じゃあ何て呼べばいい?アイト君?アイ君?マナちゃん?」


野口はとことん俺の名前を変形させたいらしい。


「谷本。」

「…愛斗君にする。」


苗字呼びは嫌なんだ…、



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