- ナノ -

*アンケお礼文

※SSL
かちり、と。出した芯を引っ込めた後にボールペンを手帳に挟む。差し出した用紙にざっと目を通した井吹君は一つ頷くと手元にあったファイルに大事そうにそれをしまい込んだ。

「悪い、引き止めちまって」

眉尻を下げて言われた言葉に緩く首を振る、生徒の頼みを訊くのは教師の勤めだからなと返せば、そうか、なんて漸く表情を緩めてくれた。時間にしては数分の事だったが一応、とばかりに腕にある時計を見れば時刻は午後四時を少し回ったところ。俺の様子に気付いた井吹君は何故か、慌てた様子で携帯を取り出すのが分かった。

「う、わ……こんな時間かよ」

手元の携帯とファイルを交互に見る井吹君は尚もわたわたと落ち着きがない。そういえば放課後はバイトがあるだとかなんだと聞いたことがあり、それか、と合点が付く。

「土方先生に出せば良いんだよな?」

言うと同時にファイルを寄越すように手を差し出せば。一つ二つと瞬きをした井吹君は、ありがとな、と。はにかんで小さく笑って見せた。